競合勝率20%→80%に! データから見えた「勝ち筋」
高橋 既存ツールに新しいツールを組み合わせ、データの事前準備を徹底された結果ですね。DIGGLEさんはいかがでしょうか。
吉岡(DIGGLE) 当社は管理会計の業務を支援するSaaS企業であり、従業員は100名ほどです。営業組織はいわゆるThe Model形式で、インサイドセールスとフィールドセールスが30名強、カスタマーサクセスが20名ほどの組織です。近年は2倍成長で、日々変化が大きい環境です。
DIGGLE株式会社 Sales Enablement Director 吉岡 究氏
新卒で株式会社リクルートに入社。リクナビ・リクナビネクストの営業・営業マネージャーとして37四半期連続達成。その後、スパイダープラス株式会社にてエンタープライズセールス部部長を経て、セールスフォースジャパンに入社。2024年8月にDIGGLE株式会社に入社しSales Enablementを担う。
吉岡 変化の大きい中、KPIや売上の目標もどんどん変わり、お客様の解像度が上がってくると、「プランを増やして単価を上げた方が良いのでは」「KPIのフェーズで目詰まりしている箇所を特定すべきでは」という話になりました。
そこで、HubSpotに入力していた情報をBIツールで可視化しました。これは縦軸と横軸のシンプルな構造で、縦軸を流入経路(オーガニック、検索広告連動型など)、横軸を営業のフェーズとしてクロス分析できます。これにより、初回商談からお客様の購買プロセスがどう進んでいくか、どこでボトルネックが生じるのかがひと目でわかるようになりました。
高橋 どのような効果がありましたか?
吉岡 とある競合企業との商談について、4四半期前の実績では勝率が20%でした。導入したいと思っているお客様が競合ばかり選ぶのは危機的状況であり、コントロールすべきポイントです。
そこでデータを基に、商品の差、商談の流れなど、競合に負けている要因を定性的に掘り下げたんです。すると勝ち筋が見えるようになり、結果的に勝率が80%にまで回復しました。どこにボトルネックがあり、どう手を打つのかが明確になったからこその成果だと思っています。
“北風と太陽”で浸透させた「入力は当たり前」の文化
高橋 データ活用の効果は明確に出たとのことですが、両社のように新たなツールを導入し、活用を定着させるまでには、現場の抵抗感などさまざまな壁があったと思います。どのように推進してきたのでしょうか。
吉岡 やはり情報が入力されない、キャッチアップできないというのは、多くの方が悩むポイントだと思います。我々は、北風と太陽でいうと、北風として「トップの強い意志」を示すことを徹底しました。データ活用に対するトップの指示をぶらさず、同時に、入力したデータには意味があることを伝え続けたのが大きいです。
とはいえ、それだけでは営業は疲弊します。営業としてはお客様に向き合うことがもっとも大事ですから、太陽として「入力負荷の軽減」にも注力しました。商談を文字起こしするツールを活用し、そこで書き起こされた情報、たとえばBANTCなどの情報を自動でCRMに書き起こす仕組みを取り入れたんです。
これにより、営業が商談後に1社あたり約20分かけて手入力していた作業を、ほぼゼロにすることができました。
小俣 非常に羨ましい環境ですね。入力が当たり前の企業文化が醸成されていると感じますが、一貫してトップダウンで進めてきたのですか。
吉岡 最初はトップダウンでしたが、弊社は新しい社員がどんどん入社してくる組織です。そこで、オンボーディング時点から「入力するのは当たり前」と刷り込み続け、かつ、その入力が先ほどの競合勝率のように、きちんと活かされていることを見せる雰囲気をつくったのが功を奏したと思っています。
小俣 事業が拡大するなかで、今の運用や仕組みを広げていくご苦労はありませんか。
吉岡 まさに苦労しています(笑)。連携やシームレス化できるものなど、日進月歩な技術やツールを調査しつつ変えています。浸透させられるかどうか、悩みながらやっていますね。
