「型」を支える土壌。最強組織におけるカルチャーの定義
前回記事【第5回】
一般的にカルチャーとは「組織内で共有されている価値観や行動基準」のことをいいます。目標に向かうために組織が「どうあるべきか(HOW)」という価値観、すなわち「行動の規範」です。
もう少し噛み砕くと、「それをやるのが当たり前になっている状態」と言えば良いでしょうか。
たとえば、私が経験したキーエンスのカルチャーは「徹底した合理主義」、対してプルデンシャルであれば、「人間の感情を重視した成果主義」がカルチャーです。強い「型」を持つ組織は、必ず強いカルチャーを持っています。 このほか、強いカルチャーを持つ企業といえば、光通信やリクルート、サイバーエージェント、DeNAなどがパッと思い浮かびます。
カルチャーが「型」の定着とマネジメントを容易にする
ではなぜ、カルチャーが強い組織ほど、売れ続ける組織になれるのでしょうか?
そのもっとも大きな要因は「型」と同様、カルチャーがマネジメントを極めてシンプルにするからです。
カルチャーは、組織全体の「共通の基準」です。この「共通の基準」があれば、フィードバックや育成の面でマネージャーもブレずに部下を指導できます。
キーエンスであれば、「合理的かどうか」が基準になるでしょう。プルデンシャルの場合はやや複雑ですが、マネージャーは部下の「感情」を重視しながら成果につながるように指導をする、ということになるでしょうか。
また、たとえば「挑戦が歓迎され、そのうえでの失敗は許される」というカルチャーの組織であれば、いちいち「新しいことに挑戦しよう」と言わなくても、常に誰かが何か新しい挑戦をしている状態が生まれやすくなります。もちろん、ただ標語として掲げるだけでなく、あくまでそれがカルチャーとして浸透していなければいけません。
また、カルチャーと「型」は相互に補完し合うというのもポイントです。つまり、カルチャーのもとでつくられた「型」が、そのカルチャーを強化するのです。 キーエンスには「ベストデモ」というトークスクリプトの「型」があることを、第3回記事で紹介しました。ベストデモは「製品の最大の利点がお客様にもっとも明確に伝わるデモンストレーション」のことで、キーエンスでは製品ごとにガチガチに固められたトークスクリプトが存在していました。
「合理主義」というカルチャーのもとに「ベストデモ」という型が生まれた → そのベストデモを実行すると成果が上がる → すると「合理主義」というカルチャーが強化される、という流れです。
あなたが今キーエンスに入社したことを想像してみてください。ベストデモを実践して成果が出れば、キーエンスの合理主義のすごさが、頭ではなく身体で理解できますよね。つまり、ベストデモの有用性について腹落ちしたことによって、「合理主義」のすごさがさらに理解できる、というわけです。
これが、「カルチャー」と「型」は相互に補完し合うということです。

