なぜ事業は停滞する? 部門最適が招く「LTVの低下」
富家(AiKAGI) 多くの企業が各部門のKPI達成に注力しているにも関わらず、事業成長が停滞する課題を抱えています。この背景には部門間の連携不足があります。
たとえば、マーケティングはリード数増加に集中する一方、インサイドセールスが実際に行う顧客との対話や、「お客様像」の把握が疎かになりがちです。インサイドセールスもアポ獲得のために「量」を優先したり、リードの背景情報不足からアプローチに苦慮したりしている。
この状況を打破し、事業を成長させるための鍵となるのが、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の最大化です。顧客にとっては企業活動すべてが「顧客体験」となり、組織全体で一貫した価値を提供できて初めて、継続的な発注という形でLTVが実現します。そこでまずは、LTV最大化において全体最適が必要な理由について考えていきましょう。
モデレーター
株式会社AiKAGI 代表取締役 CEO 富家 翔平氏
大手通販会社のマーケティング、広告代理店にてマーケティングコンサルタントを経験。その後、コニカミノルタジャパンにて、営業改革プロジェクト×マーケティング組織立ち上げを推進。マーケティング企画部 部長として、事業部・全社マーケティング組織の責任者を務めた。2023年秋よりEVeMに参画。実践者のひとりとして、マーケティングに「マネジメントの力」を掛け合わせた成果創出に挑戦している。著書『最高の打ち手が見つかるマーケティングの実践ガイド』(翔泳社)
小林(PLAINER) 部門最適は、意図しない形でLTVを低下させるリスクがあります。たとえば、営業が「商談数」というKPI達成を優先するあまり、自社プロダクトのターゲットではないが温度感が高い企業と商談を進めてしまうケースです。結果として、早期のチャーン(解約)が発生してLTVが低下し、事業がペイしなくなる。
本来注力すべきは、ボリュームがもっとも大きい「成約の可能性は高いが、まだ育成が必要な企業」です。この層に対してインサイドセールスがどのようにアプローチしていくか、戦略的に考える必要があります。
PLAINER株式会社 代表取締役CEO 小林 大氏
上智大学法学部卒業後、freee株式会社に新卒入社。初期配属のインサイドセールスチームで、50名中トップの成績を残した後、事業戦略として計画/戦略の策定から実行までを担当し、所属した全期で目標達成。その後モバイル版freeeのビジネスオーナーとして、YoY300%の成長を牽引。その際、プロダクトを活用した顧客コミュニケーションのインパクトを知ると同時に実行ハードルの高さに大きな課題感を持った。この経験をもとにPLAINERを創業。
富家 その見極め、つまりアプローチすべきお客様とそうでないお客様の選定は極めて重要ですね。とくに事業の立ち上げ期では、ターゲット顧客の定義自体が頻繁に変わります。
浜田(immedio) ええ。その定義は冷静に分析すべきです。私たちのサービスも、当初はインサイドセールスがターゲットだと考えていましたが、分析の結果、実際はマーケターが決裁者であることが多く、さらにマーケターが導入した顧客のほうがチャーン率が低いことがわかりました。
体感ではなくデータに基づき分析することが、非ターゲット顧客を明確にし、LTV向上への第一歩になる。これこそ、現場のインサイドセールスが主導すべきアプローチです。
株式会社immedio 代表取締役 浜田 英揮氏
新卒入社した三井物産では主にIT分野での新規事業を担当。Harvard Business School留学後、M&A推進室にて幅広い事業分野の投資案件の実行に当たる。2016年にbitFlyerに参画し、US拠点でCFO/現地拠点長を務める。2019年からはSansanに参画し、Bill Oneのプロダクトマーケティング及びインサイドセールス部門のマネジメントを担当。2022年にimmedioを創業。ICC京都2023 SaaS Catapult2位入賞、東洋経済「すごいベンチャー100 2023」選出。

