正しい数値がわからない? 「人力BI」からの脱却
高橋(SalesZine編集部) 営業は日々膨大な情報に接していますが、それらをデータとして正しく蓄積・分析し、営業活動を加速させるインフラとして活用するのは、なかなか難しいテーマですよね。今回は先行事例を共有しながら、持続的な成長をデータによって推進していくヒントをお示しできればと思います。
まずは、両社の営業組織でどのようにデータを活用しているのか、実際の取り組みと体制から教えてください。
小俣(アマノ) アマノは、駐車場機器やタイムレコーダーを扱っていて、直販主体の営業部隊で活動をしています。営業本部の体制は、営業職と技術職がそれぞれ300人ほど、それを支えるスタッフが100人という、比較的大きな組織ですね。
現在はウイングアークのDr.SumとMotionBoardを軸に営業データ活用を進めていますが、それ以前は、まさに「人力BI」でした。売上や、弊社で「有望」と呼んでいる商談情報を、各営業現場の社員が、あるいは私が朝早く出社し、Excelでかなりの工数をかけて集計していたのが実情です。
高橋 集計にかかる工数が膨大だったんですね。
小俣 ええ。集計しただけでひと仕事終えた気になってしまうほどです(笑)。人力では転記ミスが発生しますし、何よりも致命的なのが「どのタイミングで転記したか」が統一されていなかったことです。人によって前日だったり、当日の朝だったりするため、会議で手元の資料を並べても、全員の数値が違う。何が正しいのかわからず、建設的な話し合いができないという問題がありました。
アマノ株式会社 営業企画部 営業戦略企画課 部長 小俣 智夫氏
2000年入社、勤怠管理システムのSE、サポートセンター、事業企画を経て、2011年より営業企画部に異動しSFAを中心に営業支援システムの企画立案・導入・定着化や公式オンラインショップ構築に従事。近年はデータドリブン営業推進のためにBIシステムを導入し、業績拡大へ貢献。現在は社内のデータ活用推進者として他部門への展開、データソース管理、複数システムのデータ連携構築などを情報システム部門と協力しながら幅広く奮闘中。
高橋 その課題を解決するため、どのようにシステムを導入していったのでしょうか?
小俣 当初は、スクラッチ開発したSFAに登録されたデータの可視化を目指しました。SFA構築時に入力項目(メーカーや企業のランクなど)をマスタ化したり、日本語表記の項目をいつでも変更できるようにパラメーターとして数字で管理したりと、正規化を意識してデータベースを設計したんです。しかし、この努力が裏目に出てしまった。データを単純にBIツールに取り込み表示すると、ダッシュボードで「1」「2」と表示されてしまったり、個人名はあるが所属はわからないなど、ユーザーはその数字が何を意味するのかわからなかったり、検索しづらいという事象が起こってしまったんです。
そこで、皆が見て理解できる情報を提示するため、データ連携サービスを利用し、データの事前加工に注力しました。かんたんに言えば、ExcelのVLOOKUPのように複数のシートをつなぎ、わかりやすい日本語のデータに変換したり、分析に必要な項目を付加する作業です。地味で表に出てこない泥臭い仕事でしたが、これによって、徐々に“使える分析基盤”が構築されていきました。
結果として、営業300人以上の毎日の活動を確認できるダッシュボードを作成したり、名刺管理システムのデータを取り込んで「誰が何社・何名と名刺を交換したか」を毎月出すようにしたりと、活動の可視化が進みました。これは、良い意味でのプレッシャーが与えられる環境を整えることにもつながったと思っています。
高橋 取り組みの効果は数字に現れましたか?
小俣 はい。ある都内の支店では、Excelで手張りしていた工数が減り、時間外労働が減少した一方、コロナ禍にもかかわらず受注額が増加しました。

小俣 概してデータ活用している支店では、ノルマを達成し前年実績を伸長。逆に、あまり使っていないところでは、計画の未達や前年割れが起こるなど、業績という形で明確に成果が出ています。

