【登壇者紹介】データと実務のプロフェッショナルが語るBDRの未来
セッションには、データ提供とインサイドセールス実務の最前線に立つふたりのプロフェッショナルが登壇した。
ユーソナー株式会社 営業本部 DXグループ 執行役員 湯浅将史氏
2005年、ユーソナー株式会社入社。15年以上、法人営業として様々なビジネス課題の解決に従事。また、BtoBマーケティングの基盤となる顧客データベースの構築・維持・活用のポイントについて、各種セミナー・イベントで講演を行う。 2018年10月、営業本部 DXグループ 執行役員に就任。
NEC VALWAY株式会社 第二事業運営本部
セールス・マーケティングソリューション第二部 部長 上原重弘氏
2012年より法人インサイドセールス支援業務を担当し、500件以上のインサイドセールス企画の立ち上げ~運用改善を経験。 近年では、NECグループ各社のデジタルマーケティング、インサイドセールス支援プロジェクトを統括しながら、SFA/MAの導入支援、構築作業、運用コンサルティングも実施。2023年に戦略設計からデジタル実装、実行まで伴走支援する営業DXオファリングを立ち上げ、事業責任者として活動。
モデレーター
株式会社インサイドセールスプラス 代表取締役 茂野 明彦氏
2012年、株式会社セールスフォース・ドットコムに⼊社。グローバルで初のインサイドセールス企画トレーニング部⾨を⽴ち上げると同時に、アジア太平洋地域のトレーニング体制構築⽀援を実施。2016年、株式会社ビズリーチ⼊社。インサイドセールス部⾨の⽴ち上げ、ビジネスマーケティング部部⻑、営業責任者を歴任。2022年、株式会社インサイドセールスプラスを創業。インサイドセールスに関する記事の執筆を⾏うほか、インサイドセールスカンファレンスを企画するなどインサイドセールスの認知向上、発展に貢献している。著書に『インサイドセールス–訪問に頼らず、売上を伸ばす営業組織の強化ガイド-』(翔泳社)セッションは「テクノロジーの台頭による購買環境の変化」「BDRが取り組むべきこと」「顧客にとって良い体験の作り方」の3つのテーマで進行した。
BDRとは?
インサイドセールスの種類のひとつ。Business Development Representativeの略で、BDRと呼ばれる。主に新規開拓を担うアウトバウンド型のインサイドセールスのことを指す。対象は大手企業であることが多い。
AIの登場で大きく変わる「購買環境」とBDRへの影響
テクノロジー、とくに生成AI(LLM)の登場は、BtoBの購買プロセスを大きく変化させている。セッション冒頭では、購買側および営業現場で起きている変化について、議論が交わされた。
購買の「非対面化」と「1社選定」の常態化
まず茂野氏は買い手側の行動変化を挙げた。茂野氏が運営する企業間のマッチングサービス「Inside Sales Plus」のユーザーの例によると、近年1社のみに問い合わせを行う企業が増えているのだという。
「情報収集はウェブの中で完結し、必要な企業にだけ問い合わせる顧客が増えています。うまく進まなければ、もう1社に問い合わせする、というような状況ですね」(茂野氏)
この結果、営業はそもそも商談機会を得られず、当然深いヒアリングもできない状況に陥ってしまっていると茂野氏は警鐘を鳴らした。
一方、上原氏は売り手(営業)側の変化に言及。BDRをはじめとしたインサイドセールスが注力してきた「事前調査と仮説生成」には、「時間がかかる」「人によって調査レベルにばらつきが出る」という課題が存在していた。しかし、最近ではAIや「インテントデータ」によって、その課題が解決できるようになってきているという。
上原氏は、AIによる具体的な効率化事例として、導入中の顧客リサーチツールの活用事例を共有する。
「アプローチをしたい企業名を入力すると、AIが顧客の業界や関連データを提示し、『このような課題を抱えている可能性があるのではないか』と仮説設定まで行ってくれます。さらに、その仮説に基づいたメール文章や、トークスクリプトのアドバイスまで提示されます」(上原氏)
このように、新規開拓を担うBDRが膨大な時間をかけていた調査、整理、仮説設定をAIが支援してくれるため、生産性高く活動できるようになってきたという。
データ活用の課題:ホワイトリストから「自社データ」へ
顧客が多くの商談を望まない時代において、BDRの成否は「インテントデータ(顧客の興味関心を測るデータ)」の活用にかかっているといっても過言ではないだろう。続けて湯浅氏は、データ提供側から見た営業現場におけるデータ活用ニーズの変化を説明した。
「10年ほど前は、アプローチできていない『新しい企業のリスト』へのニーズが多かったです。しかし最近は、ファーストパーティデータ、つまり自社に保持しているデータの活用が重要だ、という話がよく出るようになりました」(湯浅氏)
しかし、多くの企業が持つデータは活用前提で収集されておらず、重複や属性不足などの課題を抱えている。湯浅氏は、このデータ基盤の整備が、営業DXを本気で推進する企業とそうでない企業の差を生んでいると指摘し、データに関する「経営層の考え方」が組織のリテラシーを決定すると述べた。

