利用傾向の可視化により見えたもの。指標の構造化の重要性
──課題を乗り越えるために、3つの柱でカスタマーサクセスの変革を進めたそうですね。それぞれの具体的な内容を教えてください。
棗田 まず取り組んだのが「データドリブン・カスタマーサクセス」への転換です。顧客の状況が把握できていないことで対応が後手に回り、機会損失してしまうことを防ぐため、顧客データの活用基盤を再設計しました。
TOPPANデジタル ICT開発センター プロダクト推進部
(現:TOPPAN 情報ソリューションBU マーケティングDX事業部 データ&テクノロジー本部 第三部 1T)
棗田 昂氏
棗田 具体的には、BIツールを用いて「利用頻度の変化」「機能活用状況」「セグメント別の傾向」を可視化しました。データ抽出ロジックの生成やSQLのたたき台作成、指標に沿った設定調整などの実装工程はAIを用いて効率化し、分析観点やビジュアライゼーション設計は人間の知見やノウハウを基に定義することで、チャーンリスクやアップセルの予兆の早期検知、顧客フォローの判断に活用できるデータ基盤を整えたのです。
平野 ダッシュボードでは、MAUやログイン状況、各機能の利用状況を全期間で分析し、顧客ごとの利用傾向や周期性を色分けして可視化しています。
加えて、顧客への価値伝達状況、利用状況(ヘルススコア)、顧客セグメント(属性)をそれぞれ3フェーズに分けてマッピングした「27グリッド」を基にオペレーションを再構築し、実際の利用状況と比較できる環境を整えました。
棗田 この取り組みにより、「なんとなく気になる顧客」といった感覚的な判断から、「利用頻度が先週比で●%減少し、平均と比較しても低下幅が大きい」など、具体的なデータに基づいた提案へと変化していきました。
平野 興味深い発見もありました。利用状況の周期性を可視化したことで、「review-it!」を必要とする業務は得意先ごとの特徴があることが見えてきたのです。利用が落ち着く時期であれば、利用状況が「Non-Active」であってもフォローの必要性は低いと言えます。
また、解約直前は一時的に利用率が上がることもわかりました。利用率のデータだけでは、「利用が活性化している」と誤認していたかもしれません。過去の傾向と照らし合わせることで「最終的な解約の判断を下すために、機能を再確認しているのかもしれない」と仮説を立て、解約リスクとして捉えられるようになりました。
棗田 現在、このダッシュボードはプロダクト関係者全体にも共有しています。PdMに機能別の利用率を共有してオンボーディング導線やUIの改善、機能開発に活かしたり、マーケティングとセールスにはログインユーザー数の推移やタスク登録数の増加傾向といったリスク判定データを共有し、ターゲティング精度の向上に貢献したり──。事業成長を実現するため、誰もが共通のデータをエビデンスとして意思決定できる「データ分析の民主化」の基盤として機能しています。
