「顧客支援」から「事業貢献」へ役割を再定義
──TOPPANデジタル(現:TOPPAN)のカスタマーサクセスの役割はどう変化したのでしょうか?
平野 現在、TOPPANグループはDXとSXを成長のエンジンとし、あらゆる領域で新たな価値を創出しています。基本的なビジネスモデルを「デジタル化(システム、仕組みの設計・開発)」「BPO(現場オペレーション・運用支援)」「データ分析」「コンサルティング」の4つの機能をつなぎ合わせた「サイクル型」として、事業内容を不断に進化させていくことを目指しています。
これはSaaSのマルチプロダクト戦略と似通っており、「review-it!」での取り組みがSaaS事業のロールモデルとなることを目指し、「部門の取り組みの成功事例を型化して展開する」という構想のもと、カスタマーサクセスは顧客の「不」を解消する運用支援やチャーン(解約)防止を担い、事業の立ち上げに尽力してきました。
しかし、マーケットが成熟しマジョリティ層へ拡大するにつれて成約までのリードタイムが伸び、より明確な価値提示が求められるようになりました。そうでなくとも、「review-it!」は業務効率化を支援するプロダクトであり、実際に活用しないと効果を実感できません。そのためミニマムプランでスモールスタートする企業が多く、アップセルを目指すには、導入後の活用を促進してプロダクトの価値を最大限に伝える必要がありました。
こうした背景から、LTV(顧客生涯価値)を最大化するため、カスタマーサクセスの役割を運用支援から「価値伝達による事業収益への貢献」と再定義したのです。
TOPPANデジタル ICT開発センター プロダクト推進部 1T グループリーダー
(現:TOPPAN 情報ソリューションBU マーケティングDX事業部 ビジネストランスフォーメーション本部 コンサルティング室 1T)
平野 雄大氏
──その際、どのような壁に直面しましたか。
平野 当時はリソースをプロダクト開発へ集中させたことでカスタマーサクセスのメンバーが半減し、リソース不足に陥っていました。「効率化しないとまずい」という危機感を抱きながら解決の糸口がつかめず、さらに、削減した時間を何に再配分するかも曖昧な状態だったのです。
そうした中、予測できなかったチャーンが続きます。これを機に、改めてビジネスプロセスマップを書き起こし、カスタマーサクセスの役割と課題を整理しました。
課題は大きくわけて3つです。1つめは、限られたリソースで顧客接点を最適化するため、活動の優先順位を見直す必要があること。2つめは、後手に回りがちな顧客対応を脱し、チャーンやアップセルの兆候を事前に察知・行動できる体制を構築すること。そして3つめが、顧客の「不」をプロダクトそのもので解決するため、カスタマーサクセスが得るVOCをプロダクト開発チームと連携することです。

