VSaaSのCSが持つ「業界のインフラを背負う覚悟」
なぜVSaaSのCSには、これほどまでに高いプロ意識とタフさを求められるのか。その答えは極めてシンプルです。私たちが提供しているのは、単なる便利なITツールではなく、業界のインフラを背負っていくサービスそのものだからです。
想像してください。たとえば不動産業界において、Web申込や電子契約のシステムが停止したとします。その瞬間、引越しを控えたユーザー、売上を追う仲介担当者、審査結果を待つオーナーなど、数万人規模の人々の経済活動に直接的な影響が及びます。
とくに部屋探しをしているエンドユーザーにとって、引越しは人生の転機です。我々のサービスが、個人の「生活」や「人生」に直結する。この責任の重大さゆえに、CSには極めて高いプロ意識が要求されるのです。この重圧こそが、「ミスが許されないという覚悟」を形づくり、同時に「自分たちが業界、そして社会を動かしている」という、ほかでは得られない大きな手応えへとつながっています。
アナログの呪縛を解き、顧客の「3年後のあるべき姿」を描く

前項で述べた状況とは裏腹に、我々が向き合う不動産業界は、数十年変わることのなかった巨大なレガシー産業でもあります。現場レベルではいまだに「紙の方が早い」「ITは難しくて現場が混乱する」という根強い抵抗感、いわば「アナログの呪縛」が存在します。
ここで、単に“人がいい”だけのCSであっては、業界の進化は止まってしまいます。顧客の顔色をうかがい、「御社がやりたい方法に合わせますよ」と迎合するのは、一見ホスピタリティに見えて、本質的にはCSとしての職務放棄に等しいのではないかと考えています。顧客の「今」の要望に応えるだけでは、真のDXは成し遂げられないのです。
CSに求められるのは、「嫌われる勇気」を持って本質を突き、顧客と議論することです。 私は、メンバーに対し、顧客に対してこう言い切る覚悟を求めます。
「そのやり方では、DXは絶対に成功しません。本気で会社を変えたいのなら、今までの成功体験を捨て、このプロセスを廃止すべきです」
これは非常に勇気がいる一言です。場合によっては、顧客との関係値が悪化したり、クレームにつながったりするリスクもあります。しかし、その痛みを共に乗り越え、システムが現場に浸透した先に、「あのとき、厳しく言ってくれて本当に助かった」という言葉を言っていただけた瞬間、CSは真の変革パートナーとなれるのです。
これは不動産業界に限った話ではありません。VSaaSのCSにおけるゴールは、単に目先の顧客の期待に応えることではなく、「顧客の期待を超える」ことです。 顧客が「今やりたいこと」は、往々にして過去の延長線上に留まりがちです。しかし、我々が見るべきなのは、3年後、5年後にあるべき未来の姿です。顧客自身もまだ見ぬビジョンを提示し、ともに現実へと変えていく。それこそが、VSaaSにおけるCSの真髄だと考えます。
顧客の期待を超えるためには、前回の連載で触れた「300項目のスキルマップ」が不可欠な武器となります。これらをコツコツと積み上げ、他社では代替できない高度な専門性が背景にあるからこそ、我々の言葉には重みが宿ります。だからこそ、顧客は我々を対等な「ビジネスパートナー」として信頼してくださるのです。

