受注率の大幅な低下……KPIの分断で見えた崩壊の予兆
──まず、改革に着手する前の組織状態について教えてください。受注率が過去数年で見ても大幅に低迷していたとのことですが、現場では何が起きていたのでしょうか。
井塚(現場統括) 正直に申し上げると、組織全体が「サイロ化」の極致にありました。マーケティング、インサイドセールス、営業(AE:アカウントエグゼクティブ)、そして受注後の支援を担うカスタマーサクセスが、それぞれ独立した目標を追い、情報が分断されていたんです。
マーケはリード数を追い、インサイドセールスは商談設定数を増やす。営業は目の前の商談をクロージングすることに必死で……。カスタマーサクセスがどんな支援で苦労しているか、どんな案件ならより価値を出せるのかを組織横断で把握できていませんでした。
結果として、「自社だと顧客に価値を提供できない案件」までパイプラインに詰め込まれ、なんとなく失注するという負のサイクルが常態化していました。
柿森(戦略・企画責任者) 私たちのサービスはBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という無形商材です。それだけに、営業が「何を約束してくるか」がサービスの品質そのものを左右します。
しかし、市況が「インサイドセールスの立ち上げ」というシンプルなニーズから、「ハウスリストの高度活用」や「GTM(Go-To-Market)戦略への伴走」へと複雑化する中で、現場の提案が追いつかなくなっていました。
受注率の大幅な低下は、私たちが戦略と営業を再統合し、数字を透明化したことで初めて浮き彫りになった「パンドラの箱」の中身だったんです。
──最初に取り組んだのは、「体制変更」だったとうかがいました。
井塚 はい。以前はマーケティングとインサイドセールスが全社横断の別組織で、営業だけが事業部直下でした。これでは現場が「事業として今、どのターゲットを狙い、どんな価値を売るべきか」という上段の戦略を汲み取ることが物理的に難しいんです。
そこで今回の改革では、柿森の配下に、マーケティングや営業などの実行部隊をすべて置く体制に刷新しました。「どういう案件を受注すべきか」という戦略的な問いから逆算して、インサイドセールスのアプローチや提案の仕方を一気通貫でデザインできる構造にしたんです。こうしなければ、戦略と現場を同期させるのは不可能だったと思います。
200以上の商談の分析で見えた「受注につながる商談」の正体
──危機的状況のなか、まず何から着手されたのですか?
井塚 徹底した現状分析です。理論だけで語っても現場は動きません。そこで、一定期間で区切って直近200件ほどの商談をすべて洗い出しました。Salesforceの商談メモを読み込み、商談の録音を聴き、失注時のお客様からのメールの文面まで精査したんです。
スマートキャンプ株式会社 BALESカンパニー
マーケティング&セールスグループ マネージャー 井塚大輔さん
──そこから何が見えてきたのでしょうか。
井塚 「勝てる商談」には明確な特徴があったんです。特定の条件を満たしている場合、受注率は40%を超えていました。それは結局、原点であるBANT(※)に集約されたのですが、とくに我々が重視したのは「投資意義の理解」と「推進力の有無」という点でした。
※BANT:ヒアリングのフレームワーク。Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Timeframe(導入時期)の頭文字をつなげたもの。
──インサイドセールスへの投資意義を感じている企業であること、そして推進力のある方であることがもっとも重要だったと。ちなみに「推進力の有無」はどのように見極めるのでしょう。
井塚 役職の高さだけではありません。次の3点を明らかにするための質問をインサイドセールスの段階から徹底しました。
1.今回のプロジェクトにおいて、担当者の方は「意思決定者に直接提案する立場」にあるか
2.社内の承認プロセスや導入フローを具体的に把握しているか
3.「個人」の悩みではなく、「組織・会社」としての重要課題を具体的に説明できるか
この基準に達しない場合は基本「商談化しない」と決めました。無理に商談化しても、お客様にとってももったいない時間になってしまいますし、当社としても営業のリソースがひっ迫してしまいます。「とにかく数を追うことをやめる」という決断が、改革の大きなターニングポイントでした。

