カスタマーモデルへの挑戦に必要な「覚悟」
カスタマーモデルは、組織の土台を見直す本質的なテーマだ。
思い出してほしい。The Model型の分業体制を導入したとき、私たちは一定のコストと時間、そして覚悟をもって決断したはずだ。カスタマーモデルの実現にも、それと同じか、場合によってはそれ以上の本質的な見直しと地道な積み上げが必要になる。にもかかわらず、「とりあえず気軽に始めてみよう」と表層的に扱ってしまえば、カスタマーモデルはほぼ間違いなく形だけの取り組みで終わってしまう。
とはいえ、一気にすべてを変えるのは現実的ではない。だからこそ、今できる小さな実践を入り口にしながらも、数年単位でじっくり取り組むべき“変革”として腰を据えることが重要なのだ。
その大前提をきちんと認識したうえで、「現実の業務の中で、何から取り組むべきか」を具体的に見ていこう。
顧客解像度を高める「問い」の立て方
カスタマーモデルの出発点は、「顧客をどこまで深く理解できるか」「顧客の情報をどこまで集められるか」に尽きる。
ここで言う情報収集とは、単なる業種や役職といった表面的な項目を埋めることではない。「買い手から見て、気持ち良く購買できる体験とはどういうものか」をファクトベースで組み立てるために、顧客や購買プロセスを深く理解する材料を集めることだ。
これを実現するための唯一にして最良の手段は、顧客インタビューだろう。たとえば既存顧客に次のような質問をしてみるだけでも、顧客や購買プロセスへの解像度は各段に変わってくる。
- 解決したいと思っている課題は何か
- その課題を社内で最初に提起したのは誰か
- どこの部署・どんな役職の人が検討に関わっているのか
- その課題は社内で解決できるのか、それとも外注パートナーを見つけたほうが良いのか
- 外注の場合、どのように情報を集めてパートナー候補を探すのか
第1回でも紹介した購買行動の図のように、現代の購買プロセスは非常に複雑だ。
しかし、さまざまな要素が絡み合う中でも「この段階ではこれを求めて、こういう活動をする」という傾向は確実に存在する。顧客ごとに情報を集める中でそのパターンが見えてきたとき、初めて「誰にどのようにアプローチをすべきか」という問いが立てられるのだ。

