IVRyは、既存投資家および新規投資家を引受先とした第三者割当増資により、シリーズDで総額40億円の資金調達を実施したことを発表した。同社は、今回の調達により累計資金調達額が106.1億円となった。

背景
IVRyは、対話型音声AI SaaS「アイブリー」を通じて、社会の基幹インフラである電話に関する業務効率化やDXを推進してきた。日本が直面する労働人口の減少は、さまざまな業界にとって経営課題である。この社会課題に対し、同社はこれまでAIによる電話応答の自動化・効率化というアプローチで、現場の課題解決に取り組んできた。クリニックの予約受付から飲食店の予約受付、代表電話の一次受付、大手企業のコンタクトセンターまで、47都道府県・97業界以上で導入が進み、T2D3(※)を上回るペースで成長を遂げている。
昨今、LLM(大規模言語モデル)の進化によって、これまで活用が困難であった通話・メール・チャットなどの非構造データが活用できるようになっている。これにより、とくにエンタープライズ企業を中心にAI対話による現場業務の効率化が加速するとともに、日々蓄積される顧客の声であるコミュニケーションデータを経営資産として活用し、事業成長につなげることへの期待が高まっている。
※T2D3:ARR(年間経常収益)が100万ドルに到達してから、2年で3倍(Triple)、その後3年で2倍(Double)の成長を遂げること
調達資金の活用用途
IVRyは今回の調達資金を活用し、エンタープライズ領域の強化と非構造データ活用の高度化を両輪で推進する。新サービス「IVRy Data Hub」によるデータ活用による事業成長の提供価値を最大化し、さまざまな企業のコミュニケーションデータから、経営資産となる価値を創出することを目指す。
- エンタープライズ領域の強化:エンタープライズ向けのセールス人材の採用を加速させるとともに、従来のデジタルマーケティング施策に加え、エンタープライズ領域での認知拡大を目的としたマーケティング活動を強化する。
- AIプロダクト開発の強化:IVRy Data Hubを中核としたグローバル水準での開発体制を強化する。AI対話技術の向上、非構造データを活用したAIワークフローの拡張を推進する。
- 事業基盤の強化:安定した経営基盤の構築を目指す。また、グローバル展開やM&Aなど、非連続な成長を実現するための将来的な投資も引き続き検討する。
資金調達概要
- 調達金額:40億円
- 調達方法:第三者割当増資
- 株主:ALL STAR SAAS FUND、Coral Capital、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、みずほキャピタル(みずほグロースパートナーズ 1 号ファンド)、SMBC ベンチャーキャピタル、フェムトパートナーズ、BRICKS FUND TOKYO、Boost Capital(※順不同)
投資家からのコメント(順不同)
ALL STAR SAAS FUND Managing Partner 前田ヒロ氏、Partner 神前達哉氏

前回ラウンドに引き続き、今回もリード投資をさせていただきました。奥西さん率いる力強い経営陣が、IVRyを着実に成長させています。「音声×AI」という競争の激しい領域において、プロダクトを磨き上げ、突き抜けた実績を達成してきた事実こそが、チーム全体のエグゼキューション力を物語っています。そして、その成長は止まること知らず。経営陣が描くビジョンが着実に経営数値として具現化されていく様を目の当たりにするたび、深い感銘を受けています。引き続き、"ALL STAR"な仲間たちとともに、IVRyが日本を代表する企業へと成長していく過程に伴走できることを、心から光栄に思います。
Coral Capital Founding Partner & CEO James Riney氏、Associate 片山晴菜氏

日本では労働人口減少やDX推進が加速する一方で、未だに非効率な電話業務が多く、顧客との対話データの活用も進んでいません。IVRyはSMBでの絶大な支持を確立しつつ、既に年間契約1億円超の大手顧客を獲得するなど着実にエンタープライズ展開も進めています。AIの進化やインバウンド観光の増加といった追い風を背景に、単なる自動応答を超えて、電話を基盤とした法人コミュニケーション・データ活用の新たな標準となる世界線を楽しみにしています。
JICベンチャー・グロース・インベストメンツ ベンチャーキャピタリスト 坂本匠氏

人口減少や労働力不足が深刻化する中、限られた人材でいかに生産性を高めるかは、多くの企業が直面する社会課題です。IVRyは、効率化余地の大きい電話対応領域においてAIによる自動化を実現し、急速な成長を遂げています。業界や顧客課題に対する深い理解、高い技術力と提案力、そしてそれを支える優秀なチームが同社の成長を牽引しています。今回の出資を機に、弊社としてもIVRyのさらなる成長を支援しながら、社会全体の業務効率化と働き方改革の推進に貢献できることを期待しております。
IVRy 代表取締役/CEO 奥西亮賀氏のコメント

シリーズDでの40億円、累計106.1億円の資金調達は、当社の技術力とプロダクトが、社会の基幹インフラである電話というコミュニケーションに、大きな変革をもたらす可能性を評価いただいた結果だと受け止めています。お客様をはじめ、これまで当社を支えてくださったみなさまに心より感謝申し上げます。創業以来、私たちはアイブリーを通じて、労働人口の減少という深刻な社会課題に対し、まずは社会インフラである電話のAI化による業務効率化を推進し、T2D3を上回る急成長を遂げてまいりました。
現在、LLMの進化を背景に、市場のニーズは従来の業務効率化に留まらず、電話やメールといった「顧客の生の声」を「新しい経営資産」として事業成長に繋げるフェーズへと急速に移行しています。
今回の調達を機に、私たちは顧客の声を活用する「IVRy Data Hub」の開発に注力し、エンタープライズ領域展開の本格化を図ります。あらゆるコミュニケーションデータから新たな価値を創出し、お客様の事業成長そのものに貢献することで「最高の技術をすべての人と企業に届ける」というミッションの実現を目指します。
