The Model型組織の“理想と現実”
『THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(福田康隆 著、翔泳社)をきっかけに、マーケティングからインサイドセールス(IS)、フィールドセールス(FS)、そしてカスタマーサクセス(CS)までを一気通貫で管理するフレームワークとして“The Model”が日本で普及した。

The Modelにおいて暗黙のうちに前提とされているのは、「各部門が分業していても、顧客情報が途切れずに引き継がれている」という状態だ。
つまり、本来であれば、部門をまたいでリードの情報が継続的に蓄積・共有され、各担当者が顧客の理解を深めながら、それぞれの接点で価値を提供していくことが望ましい。しかし、実際には、この前提がうまく機能していないケースも少なくない。
たとえば、こんな場面に心あたりはないだろうか。
【マーケティング→IS】事前情報の不足で、ISのアプローチが空振りに
マーケティング部門が獲得したリードについて、どの資料を見たのか、どんな課題意識があったのかといった情報が共有されず、インサイドセールスは「とりあえず電話してみる」状態に。結果として、的はずれな会話になったり、ニーズの深掘りが甘く次のステップにつなげられなかったりと、リードの質を活かし切れない。
【IS→FS】リードの温度感が伝わらず、FSが初回商談で打ち手に迷う
インサイドセールスが得たヒアリング内容が不十分、もしくは要点がうまく引き継がれておらず、商談にてフィールドセールスが顧客の温度感やニーズをその場でいちから探る羽目になる。
【FS→CS】顧客の期待と支援内容がかみ合わず、営業が“信頼回復”に奔走
商談中にヒアリングした導入の目的や社内事情がカスタマーサクセスに伝わらず、的はずれな対応で顧客の不満が蓄積。サポート体制に不信感を持たれ、営業にクレームがきたり、場合によっては提案のやり直しが必要になったりする。
こうした情報の断絶が積み重なることで、部門間の分断が進み、結果として統一感のない対応が続き、顧客の混乱や不信感を招く。その影響は、顧客との関係構築の停滞、ひいては本来取れていたはずの売上の取りこぼしとして表面化する。
なぜこのような状態に陥ってしまうのだろうか? その背景には、①顧客の購買行動の複雑化と、②分業体制により目標が形骸化しやすいというふたつの要因がある。