日本リスクコミュニケーション協会(略称:RCIJ)は、全国の企業・団体に勤務する10代~70代の男女289名を対象に、「職場における上司の発言・言動がもたらすハラスメントリスク」に関する意識調査を実施した。
本調査は、危機管理心理学における「無意識バイアス(※)」に焦点をあてており、実際に、多くの上司が“良かれと思って”声をかけていた定番フレーズが、部下の心理的安全性を下げ、パフォーマンスを低下させ、離職・評判毀損といった“会社の経営リスク”につながり得る実態がわかった。
※本人の意図や悪気に関係なく、慣習・経験が判断や言い方に影響してしまう“思い込みの偏り”のこと
認識の非対称の実態
管理職を対象に「直近2年間に“悪意のない”指導が部下を傷つけたと感じたことはあるか?」と質問したところ、54.3%が「ない、または知らない」と回答した。
非管理職に「直近2年間に“悪意のない”上司の指導で傷ついたことはあるか?」と質問したところ、60.7%が「ある」と回答した。
“使われがち×嫌がられがち”の危険フレーズ
善意の定番フレーズが、意図せず部下の心理的安全性を下げ、生産性・定着にマイナスに作用していることが明らかになった。
部下の意見をまとめるための「うちの会社はこういうものだから仕方ないよ」
管理職の60.4%が使う「うちの会社はこういうものだから」は、非管理職の58.4%が「不快」と回答した。
【管理職】「うちの会社はこういうものだから仕方ないよ」という部下への声掛けを普段どれくらい使用しますか?(n=115)
- よく使う 27.8%
- たまに使う 32.2%
- ほとんど使わない 33.0%
- 全く使わない(使ったことがない) 7.0%
【非管理職】上司から「うちの会社はこういうものだから仕方ないよ」のような声掛けされたらどのように感じるか?(n=173)
- やる気が出る(納得できる) 10.4%
- 特に何も感じない 31.2%
- いやな気持ちになる 58.4%
スケジュールを心配する部下に「なんとかなるよ、とにかくやってみて!」
「なんとかなるよ、とにかくやってみて!」について、とくに20代の非管理職の48.3%が「いやな気持ちになる」と回答。他年代に比べ、20代が評価基準や支援の不明確さに敏感で、曖昧・丸投げ型への不快感が強いと読み解ける。
【管理職】「なんとかなるよ、とにかくやってみて!」という部下への声掛けを普段どれくらい使用しますか?(n=115)
- よく使う 33.9%
- たまに使う 47.0%
- ほとんど使わない 15.7%
- 全く使わない(使ったことがない) 3.5%
【非管理職】上司から「なんとかなるよ、とにかくやってみて!」のような声掛けされたらどのように感じるか?(n=173)
- やる気が出る(安心する) 33.9%
- 特に何も感じない 40.0%
- いやな気持ちになる 35.3%
定番の励ましフレーズの効果がマイナスになることも
部下を鼓舞したり方向性を与えるつもりの定番フレーズが、動機づけにならず、反発や萎縮を誘発している可能性が明らかとなった。
部下を鼓舞するため「みんな頑張ってるから君も頑張って!」
「みんなも頑張ってるから」というフレーズで、結果的に部下のやる気よりもいやな気持ちを起こさせる割合が10ポイント以上高いことがわかった。
【管理職】「みんな頑張ってるから君も頑張って!」という部下への声掛けを普段どれくらい使用しますか?(n=115)
- よく使う 28.7%
- たまに使う 39.1%
- ほとんど使わない 24.3%
- 全く使わない(使ったことがない) 7.8%
【非管理職】上司から「みんな頑張ってるから君も頑張って!」のような声掛けされたらどのように感じるか?(n=173)
- やる気が出る 24.3%
- 特に何も感じない 40.5%
- いやな気持ちになる 35.3%(▲11ポイント)
「まず指示通りにやってみて」
管理職の78%が「まず指示通りにやってみて」を使用することがわかった。一方で、部下にとってはやる気が出る(納得できる)よりもいやな気持ちになる割合が高いことがわかった。
【管理職】「まず指示通りにやってみて」という部下への声掛けを普段どれくらい使用しますか?(n=115)
- よく使う 27.8%
- たまに使う 50.4%
- ほとんど使わない 20.0%
- 全く使わない(使ったことがない) 1.7%
【非管理職】上司から「まず指示通りにやってみて」のような声掛けされたらどのように感じるか?(n=173)
- やる気が出る(安心する) 17.3%
- 特に何も感じない 52.0%
- いやな気持ちになる 30.6%(▲13.3ポイント)
【調査概要】
- 調査名:「無意識バイアスの指導についての意識調査」
- 実施時期:2025年10月
- 実施主体:日本リスクコミュニケーション協会(RCIJ)
- 調査方法:インターネット調査 有効回答数:289名(全国の20〜60代 男女)
