型の定着を阻むもうひとつの壁、営業の心構え
前回記事【第4回】
第4回記事では、マネージャーのリソース不足が「型」の定着を阻む大きな要因だと述べました。しかし、もうひとつ、根深い問題があります。それは、営業メンバー自身の心構えです。
営業企画部やマネージャーが苦労してつくった型も、現場では「自分には関係ない」「俺は俺のやり方でやるから」と、使われずに終わってしまう。こうした状況は、型の浸透を阻む大きな壁になります。
「心構え」というと、目に見えず、成果に直結しないように思えるかもしれません。しかし、実はこの内面的な部分こそが、営業メンバーの成長を大きく左右するのです。
営業にとって大切な心構えは、「素直さ」と「原動力」
少し成果を上げたことで傲慢になり、学ぶ姿勢を失った人は、そこで成長が止まってしまいます。傲慢になるところまで行かなくても、知識や経験が増えるにつれて、人は自分のやり方や考え方に凝り固まってしまいがちです。
しかし、営業として伸びる人に共通する大切な要素は、「素直さ」や「謙虚さ」です。変に自分なりの「型」が染みついていない若手が研修の対象になりやすいのも、彼らがまだ素直である可能性が高いから。そして、ハイパフォーマーが進化し続けるのは、この「素直さ」や「謙虚さ」を失わないからです。
教わった「型」を素直に実践し、最大限に営業活動に活かすためにも、営業メンバーは「常に学び続ける姿勢」を持ち続ける必要があるのです。
では、どうすれば「常に学び続ける姿勢」を保てるのでしょうか。まず大切なのは、営業メンバー自身が「自分の原動力が何か」を知ることです。
私の場合は昔も今も「自己成長」が原動力です。できないことができるようになること、売ることのハードルが高い顧客に購入してもらうことなどが、高いモチベーションになっていました。そのためには常に新しい知識ややり方を取り入れる「学ぶ姿勢」が欠かせません。
また、目標を達成しても決して「満足しない」と決めていました。目標を達成した瞬間に喜びを覚えるのは自然な感情ですが、そこで「満足しきった」「やりきった」と思ってしまうと、そこから先を目指せなくなります。
私はよく山登りにたとえるのですが、「山を登り切って満足したら、あとは山を下りるだけ」という状態に似ています。山を登っているときは前のめりで謙虚な姿勢でいられますが、下るだけになると、上体を起こしたような横柄な態度になってしまうのです。
ただ、「もっと上を目指す」「成長し続ける」と言われても、なかなかそれを原動力にできないという人もいるでしょう。これは当然です。原動力は人それぞれなのです。
私の場合は「できなかったことができるようになる」という自己成長に対する思いが非常に強いものでしたが、人によっては、純粋に「お金を稼ぐ」ことに喜びを見いだす人もいます。また、「チームで高い目標を達成する」ことに喜びを見いだし、「このマネージャーを勝たせたい」「このチームで日本一を取りたい」という目標に熱量を注ぐ人もいるでしょう。
重要なのは、自分がどこに必死になれるのか、熱量を注げる対象を見つけることです。その目標が明確化されていれば、それを達成するためには何が必要かを考え、常に学ぶ姿勢でいられる状態になります。営業メンバー全員がこうしたマインドセットを持つことができれば、営業の「型」は浸透し、組織は見違えるほど強くなるでしょう。