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SalesZine & Beyond 2025

2025年10月23日(木)12:30~17:45

SalesZine Day 2025 Summer

富士通とリコージャパンが実践する「営業AI活用」 営業スタイルに応じた設計と、現場浸透の秘訣を探る

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活用浸透の合言葉は「S・U・V」 社内SNSもフル活用

高橋 新たなツールを導入しても、なかなか現場に浸透しないという悩みは多く聞かれます。それはAIも同じではないでしょうか。AI活用を定着させるために、どのような工夫をされていますか。

中山 Business Supportモードは2024年12月から本格始動し、試行錯誤しながら定着を進めています。AI活用を現場で加速させるためには、“環境づくり”が何より重要ですね。私がとくに意識して取り組んでいるのは、「セキュリティ(Security)」「ユーザビリティ(Usability)」「成功体験(Victory)」の3つです。

 まずセキュリティについては、利用に関する責任ガイドラインを提示しつつも、社外AIを使ってリサーチした情報をどのように社内AIへ適切に取り込むか、セキュリティ観点での使い分け事例を社内に発信しています。線引きが不明確なことで活用をためらうケースがあったため、「ここまではOK」と明示することで、安心して活用に踏み出せるようになりました。

 次に「ユーザビリティ」です。忙しい営業にとって、チャット型のインターフェースを介して自らLLMに問いかけ、欲しい情報を引き出すのは負担となります。そこでBusiness Supportモードのインターフェースとして、「営業プロセスのどこで、どのように質問すれば望ましい回答や資料を得られるか」といった、ユースケース別にボタンを押していくだけでアウトプットにたどり着けるプロンプトレス型のインターフェースを構築したところ、利用率が大きく向上しました。

 最後に「成功体験(Victory)」です。AIを使いこなして商談を前に進めた営業担当を“ヒーロー”として表彰しています。またAI活用スキルを診断できるアプリも開発し、スキルの高い人と低い人の受注率や案件の進捗度合いを比較・分析しています。このように「使うと成果につながる」「使うと評価される」という循環を生み出しています。

高橋 「成功体験」の共有について、表彰以外にも何か工夫されているのですか。

中山 社内SNSを活用し、2,000人以上が参加する社内AIコミュニティに対して“ラジオ型の生配信”を毎週実施しています。ラジオには、現場でAIを積極的に活用しているエキスパートやトップセールスをゲストとして招き、実際の活用事例や営業ノウハウについて語っていただいています。リアルな声を届けることで、AI活用の敷居を下げられればと考えています。

 社内SNSで発信した内容が教育コンテンツとして蓄積されているので、スキル診断データと連携させて、「このスキルレベルの方にはこの動画がおすすめ」とレコメンドする学習支援アプリも提供しています。また、このコンテンツ自体がAIの学習データになりますので、現場の実践知をAIに継続的に学習させています。

「ワンプッシュ」で完結 AIを業務フローに溶け込ませる設計

高橋 リコージャパンさんからも、AI活用を浸透させる工夫についてお聞かせいただけますか。

児玉 構想から2~3年をかけてAIシステムを構築したのですが、やはり当初は、本部主導のシステムではAIのレコメンデーションが現場の感覚と合わないことが多く、活用が進まないという課題がありました。そこで、「なぜAIがその提案をしたのか」という理由を明確に提示するように改善したんです。むしろ、回答の根拠のほうを、営業がトークスクリプトに活かすようになったのは、興味深い変化でしたね。

児玉 また、ITリテラシーのばらつきによるAI活用格差も課題でした。そこでリコージャパンでも、AIを積極的に活用する社員を育成し「AIエバンジェリスト」として、彼らが自発的にAIを活用し活用事例の発信や成果の発信することを奨励しました。エバンジェリスト制度を通じて現場のAI推進役としての役割を後押しし、ノーコードツールの提供や教育・支援を行うことで、現場の社員が自ら業務にAIを取り入れる流れをつくり出しました。

 やはり、AIは業務フローの中に“当然のもの”として組み込むことが重要です。SFAにAIを標準搭載するほか、富士通さんとは少し異なる点として、なるべくチャット対話を省くようにAIを設計しています。

 特定の商品の担当者向けにAIを構築し、顧客のウェブサイトURLを入力して「スタート」を押すだけで、AIが自動的に提案コンセプトを返す仕組みを導入。対話を通じて情報を引き出すのではなく、ワンプッシュで答えが得られるこの設計により、AIは業務の一部として定着し、効率的な運用を実現しています。

高橋 なるほど、その人専用のAIというわけですね。じぶんごと化することで、浸透が進みそうです。

次のページ
全社を挙げてAIに親しみ、「隠れAI人材」に光を当てる

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この記事の著者

伊藤真美(イトウマミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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