富士通とリコージャパン、それぞれの「営業AI活用」
高橋(SalesZine編集部) AIが生産性向上と事業成長に不可欠なツールであることは、いまや共通認識となりつつあります。本日は、営業AI活用の最前線に立つ、富士通の中山さんとリコージャパンの児玉さんにお話をうかがいます。まずはおふたりの役割と、両社の営業体制についてお聞かせください。
中山(富士通) 私は国内の大手企業を担当するエンタープライズ事業部門の中で、セールスイノベーション推進統括部に所属しています。各事業本部を横断的に把握しながら戦略を立て、営業向けのAIを社内に浸透させ、生産性を高めることがミッションです。
私たちの顧客は年商500億円以上の大手企業が中心で、営業スタイルはABM(アカウントベースドマーケティング)に近いと言えますね。個社ごとに担当者を設け、ひとりあたり多くて10社から20社のお客様を担当しています。

富士通株式会社 エンタープライズ事業 エンタープライズ戦略推進本部 セールスイノベーション推進統括部 中山 拓己氏
富士通及びグループ各社で主に製造業・流通業向けのコンサルタントとして豊富なキャリアを積む。また、マーケティングから営業戦略策定まで幅広い実務経験も併せ持つ。特にBtoBマーケティング戦略(ABM)とコンサルティング型セールスが強み。現在はセールスイネーブルメントの専門家として、富士通のエンタープライズ事業でのAIドリブンなセールス手法の開発・現場定着に取り組む。立教大学大学院ビジネスデザイン専攻にてMBA取得。
児玉(リコージャパン) 私はデジタルサービス企画本部に所属し、リコー製のAIサービス企画ならびに自社・他社サービスをラインナップ化した販売機能を担っています。また、同時に社内でのAI活用を推進しています。会社全体では、大手企業はもちろんですが、中堅・中小企業のお客様が多く、約100万事業所という非常に広い顧客基盤を持っています。
「リコー=コピー機・プリンター」というイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、現在はそれ以外のオフィスサービス事業にも力を入れており、多様なサービスまで含めてお客様のニーズに合わせて提案・提供しています。

リコージャパン株式会社 デジタルサービス企画本部 AIサービス事業センター センター長 児玉 哲氏
リコー入社後、営業・マーケティング、経営企画などさまざまな部門を経験し、2020年12月クラウドサービスの企画・開発・販売を行うメイクリープス株式会社の代表取締役CEOに就任し、国内市場のデジタルサービスを推進。2024年4月からは現職として、国内における自社/他社のAIソリューションの拡販ならびに社内でのAI活用における業務効率化・生産性向上を推進する。
高橋 それぞれ営業活動の中で、AIはどのような領域に使われているのでしょうか。
中山 私がとくにAI活用を推進しているのは、フィールドセールスの領域です。富士通の場合、扱う商材が高額でカスタマイズ性が高く、非常に複雑なものが多いのが特徴です。そのため、お客様の事情に合わせて、製品やサービスを組み合わせて提案する「ソリューションセールス」に近い形になります。
このソリューションセールスにおけるアウトバウンド型の営業活動でAI活用を進めています。とくに大手企業のお客様が多いため、ABMによるアプローチを採用し、アカウントプラン作成、オポチュニティリスト整理、仮説提案書準備といった一連のプロセスで生成AIを活用し、潜在的なニーズを掘り起こしていくといったイメージですね。
児玉 リコージャパンの場合は、ソリューションセールスはもちろんですが、ボリュームゾーンである中堅・中小企業のお客様には、できるだけスピーディに効率よく商品やサービスをお届けする必要があります。比較的カスタマイズ性が低く、導入が比較的容易なソリューションをご提案する機会が多く、「プロダクトセールス」が主軸となります。この営業活動をさらに効率化し、提案の確度を高めるためにAIの活用を本格的に進めているところです。