仮説はAIに「丸投げ」するな 15分で「刺さる提案」を作るための3つのステップ
──城野さんが仮説提案づくりにAIを活用される場合、具体的にどのような手順を踏んでいるのでしょうか。
私が思考を拡張させるためにAIを使う際は、この3つのステップを踏んでいます。
- STEP 1:AIに「事実」だけを並べさせる
まず「リサーチ」のフェーズでは、AIに「業界・企業・部門・個人」の4つの切り口で、客観的な事実だけを整理させます。ここでのコツは、AIに解釈や仮説を求めず、材料を揃えることに徹することです。
- STEP 2:人間が「提案の軸」をひとつに決める
AIが集めた情報を見て、自分が「どの課題にフォーカスして提案したいか」という軸を決めます。AIに選ばせるのではなく、自らが主導権を握る。これが最大のポイントです。
- STEP 3:AIに5回「揺さぶって」もらう
軸が決まったら、AIにこう聞きます。「私はこの課題に対し、こう提案したい。どう思う?」と。そこでAIから返ってくるフィードバックに対し、自分の考えをさらにぶつけていく。これを5回ほど繰り返すことで、提案は徐々に尖り、そのお客様ならではのシナリオへと育っていきます。
──なるほど。この手順なら、短時間で質の高いベースが作れそうです。
補足として、私は音声入力で、AIと喋りながら壁打ちを行っています。文字入力だと「どう書くか」というクッションが挟まりますが、声なら脳内で思いついた仮説をそのままぶつけられるからです。
するとAIも「その提案じゃ顧客を説得できないよ」と、上司役になって返答してくれますし、顧客役になってもらえば商談ロープレまで完結できます。こうしてシナリオを磨けば、現場でのカウンタートークも自然と準備できてしまいます。
営業の本質は「志」に宿る──AIが踏み込めない領域
──AIを使って誰でも質の高い準備ができる時代、最後に差がつく「営業の真価」はどこにあると考えますか。
これが今日私のいちばん伝えたいことですが、「営業としての“志”を持つこと」。これに尽きると思っています。

昨今、「リサーチや準備はAIに任せて、営業は顧客との対話時間をもっと増やすべきだ。それが営業の価値だ」という声をよく聞きます。もちろんそれも大切ですが、営業パーソンの価値は、単にお客様と接点を持つこと、電話や対面でコミュニケーションを取ることだけではありません。
もっと手前の、思考の根幹にある「志」──つまり、「お客様のこの課題を、どうしても解決したい。そのために自分がいるんだ」という信念を持って提案に向き合う姿勢こそが、AI時代に問われていると思うのです。
──その「志」を持っているかどうかが、AIとの付き合い方そのものを変えてしまうということでしょうか。
そうです。たしかにAIは驚くほど便利で、人間を凌駕する高い知能を持っています。しかし、AIはあくまで「事実の整理」や「壁打ち相手」に徹する存在。AIに唯一できないことが「志を持つこと」なんです。
もし、営業が志を持たないままAIを使えば、提示されたそれらしい回答を「これでいいじゃん」と鵜呑みにしてしまうでしょう。それでは、単に「AIが出した答えを運ぶ人」に成り下がってしまいます。
志があるからこそ、AIの情報に対しても「いや、これでは顧客の心は動かない」「この企業にとっての正解はこれじゃない」と、自らの意図を持って取捨選択ができるようになります。
「お客様にこの気づきを持ち帰ってほしい」「こういう流れで商談を進めたい」──こうした明確な意図をAIにぶつけ、対話を重ねる。そのプロセスを経て初めて、そのお客様ならではの状況と、営業自身の志が重なり合った「血の通った提案」が生まれるのです。
