新たな価値創造へ NECスタイルのカスタマーサクセスの成果は?
高橋(才流) カスタマーサクセスというと、SaaS企業での取り組みを想起する方が多いと思います。NECさんのような伝統的な日本の大企業における位置づけや全社戦略についてお聞かせください。
帯刀(NEC) まず提供するITサービスにおいて、昨年からBluStellarというブランドを立ち上げました。BluStellarはお客様の経営課題を解決するためのソリューション集合体ですが、この提供を通じて当社自身も変革していこうと考えています。
NECと言うと、「絶対に逃げない、すべてのプロジェクトを完了させる会社」と責任感のあるシステムインテグレーターというイメージが強いと思います。しかし、今の世の中ではそれだけではお客様の課題を解決しきれません。お客様の課題を先んじて特定し、先回りして提案する動きを強化する必要があります。この「お客様の課題に先回りする」という部分が、カスタマーサクセスの取り組みと深く関係しています。

宮野(NEC) 私たちの会社はメーカーでありシステムインテグレーターでもあるのですが、多くの日本企業のITベンダーと同様に、従来は「売り切って終える」というビジネスモデルでした。しかし、お客様にとっては納品後がスタートであり、そこから価値創造のサイクルを一緒に回していく必要があります。そのためのメソッドとコンセプトとして、カスタマーサクセスが非常に有効だと感じ、積極的に取り入れてきました。
高橋(才流) カスタマーサクセスというコンセプトを取り入れてどのような変化がありましたか?
帯刀(NEC) 経営課題を解決するためにお客様と共に価値を創造するモデルに変わりました。最初から解決方法を提示するのではなく、お客様が経営課題を把握しきれていない状態でも、戦略コンサルタントと一緒にロードマップを描き、「まずやってみましょう」と伴走しながら長期的な支援を標準としています。
宮野(NEC) これまでの納品後の「運用保守」は、基本的にマイナスからゼロに持っていく作業で、トラブルを未然に防ぐことは得意でしたが、納品したシステムをどう活用して価値につなげるかはお客様任せの部分もありました。

宮野(NEC) CSM(カスタマーサクセスマネージャー)設置後は、「何を目的に購入したのか」を起点にサクセスプランを作成し、1年かけてゴールを達成するようなプロセスを導入しています。定量的な成果としては、リテンションレートが20%改善した例もあり、一部のサービスでは年次98%という、優良とされるSaaSベンダー水準の数値も達成しています。
高橋(才流) 組織体制としては、どのようにカスタマーサクセスを推進されているのでしょうか。
宮野(NEC) アカウントベースのCSMを担う営業とSEがいて、その下にAIやセキュリティといったテーマの専門家となる横断CSM、さらにその下にプロダクトCSMを配置しています。これらのメンバーが連携して、お客様に継続的な価値を提供する体制となっています。

高橋(才流) お客様からの反応はどうでしょうか。
宮野(NEC) 感謝の声をいただくことが本当に増えました。「カスタマーサクセスの伴走によって、しっかりソリューションを活用できるようになった」と。その言葉を営業やSE、開発者にも伝えるとメンバーのモチベーションが上がります。また、VoC(Voice of Customer)が得られることで製品改良にも活かせるようになりました。