大学院在籍中よりソフトウェアベンチャー立ち上げに参画後、大手総合系コンサルティングファーム勤務、IoTなどを手掛けるIT企業役員を経て現職。現在は専修大学大学院にて客員教授も務める。 EYストラテジー・アンド・コンサルティング のカスタマーエクスペリエンス・トランスフォーメーションにて、ビジネス成長のドライバーとなる戦略策定(サービスデザイン)から顧客接点改革(マーケティング、営業、コンタクトセンター、カスタマーサクセスなど)の実現までを総合的に支援するチームのパートナーを務める。直近では、CROアジェンダのオファリングリーダーを務める。
AI時代に求められるバイヤーイネーブルメントと、その基盤となる顧客データの統合について解説した第2回はこちら!
経営陣が直面する「売上の担い手不足」
日本能率協会の統計によれば、2014年から2024年の10年間、企業の経営課題トップ3は変わりません。しかし、私も少し驚いたのですが、2024年度の調査では「人材の強化」が第1位になっているのです。
第1回でも触れたとおり、売上を支える担い手である販売従事者は減少の一途をたどっています。これらのデータを見ても、経営者の約半数が「採用・育成・多様化への対応」を最優先課題としているのは、極めて合理的な判断と言えるでしょう。
こうした状況において、企業はどのような対策を講じているのでしょうか。営業現場の代表的な課題と、それに対する営業施策を見てみましょう。セールススキルの向上に悩む営業現場に対して、企業はさまざまなトレーニングを実施しています。
しかし、残念ながら、これらの施策が期待どおりの効果を生むケースはまれです。なぜなら社内施策の展開においても、顧客への営業時と同様に「4つの不(不要・不急・不適・不信)」という心理的な壁が存在するからです。
セールスイネーブルメントを阻む「4つの不」
4つの「不」とは、顧客が感じる心理的障壁(不要・不急・不適・不信)を解消することで自社の優位性が生まれ、購買につながるという考え方です。これは社内の組織改革にもそのまま当てはまります。
- 不要:現場は「この研修を受けたところで、来月の受注が上がるのか?」と冷ややかに見ています。
- 不急:目標未達のときや繁忙期に座学を入れられても、「1件でも多く案件を回るのが先だ」と、まともに聞いてもらえません。
- 不適:エース級のノウハウをそのまま展開しても、中堅層は「自分たちには無理だ」と諦めてしまいます。
- 不信:最後には「現場を知らないコンサルや企画部門がつくったもので本当に勝てるのか」「これを実行している人は本当にいるのか」という疑念に至ります。
コンテンツ自体の良し悪し以上に、現場の心理的抵抗をいかに排除し、組織に「インストール」していくか。これこそが、セールスイネーブルメントにおいてもっとも重要なポイントとなります。

