AI時代におけるウェブサイトの可能性 営業の「武器」に変える3つの視点
──AIが検索結果を要約して表示するなど、AIの進化により、ウェブサイトへの直接的なトラフィックが減少する可能性も示唆されています。そうした中、ウェブサイトに投資する意義とは何でしょうか?
たしかに、単純にキーワードに合わせた情報を羅列するだけでは、AIに情報をインターセプトされてしまい、ウェブサイトに訪れる理由がなくなってしまいます。
しかしそうした中でも、AIだけでは得られない「なるほど!」という深い洞察や、社内で共有しやすい情報を提供することで、ウェブサイトの価値は大きく高まります。そのために必要なのが、具体的な事例や、パーソナライズされたコンテンツの提供、そして“営業担当の代わり”を担うウェブサイトの構築という3つの視点です。
具体的な事例や価格は、顧客がもっとも知りたい一次情報です。価格競争や競合への情報流出を恐れて公開できない情報であっても、たとえば、サイトを会員登録制にすることで、見込み客への価値提供とリスク回避を両立できるでしょう。同時に、必要な人に必要な情報を届ける工夫をすることで、訪問者がサイトの中を探し回る必要がなくなり、顧客体験が大幅に向上します。
さらに、入社1~2年めの営業担当が担うようなシンプルな情報提供をウェブサイトに任せられるようになれば、営業担当は、顧客理解や提案活動といったより高度な業務に集中できるようになります。
顧客が自ら情報収集する時代において、こうしたウェブサイトへの投資を怠ると、競合との情報格差はどんどん広がります。ウェブサイトを整備することは、営業活動を効率化し、競争力を高めるための土台づくりと言えるでしょう。

──ウェブサイトはマーケティング任せになりがちで、営業が積極的に関わろうとする意識は薄いのかもしれません。ウェブサイトを営業活動の「武器」として活用するために、とくに営業は、どのような取り組みを行うべきでしょうか。
ウェブサイトの改革について、営業がすべきことは主に2点あります。ひとつが、理想の顧客像の明確化と共有。営業は「こういう業種、企業規模、役職・部署の顧客が理想的である」という明確な顧客像を把握しているはずです。
こうした理想像と、営業現場の具体的な課題や顧客が受注に至らない理由をマーケティング部門と共有することで、マーケティング部門はより効果的な戦略を立て、実行できるようになるでしょう。結果的に、リード獲得の質を高めることができます。
もうひとつが、顧客の検討プロセスに合わせた情報提供です。顧客は初回訪問後、すぐに注文するわけではありません。予算確保や社内検討、経営層への上申など、さまざまな検討プロセスを経ます。そのため営業は、事例やノウハウなど、顧客が検討を進めるうえで必要な情報を適切なタイミングで提供することで、次の商談につなげる必要があります。
この過程で、顧客はウェブサイトを閲覧したり、メールで届いた情報を見たりして、自社への興味を深めます。営業とウェブサイトが連動し、リアルとデジタルがシームレスに連携することで、顧客は「この会社に任せたい」という納得感を得るのです。
「もっと良いリードを」といった漠然とした要求をマーケティング部門に伝えるだけでなく、顧客の検討プロセスを理解し、「面談のあとに顧客に何をどう読んでもらい、もう一度会いたいと思ってもらうか」といった具体的な施策をマーケティング部門と協力して追求していく必要があります。