AIは「データ活用の根幹」へ
──昨今のAI活用の動向をどう見ていますか。
ChatGPTが個人に普及したことが大きいと思いますが、社内外を問わず、AIに対する抵抗感はほとんどなくなったと感じています。「使ってみよう」という気持ちへのシフトは、本当に早いなと思いますね。
株式会社セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 コマーシャル営業統括 安田 大佑氏
2000年にデルコンピュータ株式会社(現デル・テクノロジーズ株式会社)に入社。営業マネージャーとして法人担当、コンシューマ担当部門の責任者を務めた後、中国の大連では同社オペレーションサイトマネジメントに従事。2008年、IT企業向けにマーケティング戦略立案と実行の受託業務を展開しているアメリカのMarketstar Corporationの日本代表に就任。2010年、クラウド型セキュリティのイギリスのMessagelabs(現 Broadcom Inc.)にコーポレートセールス シニア マネージャーとして入社。2012年、株式会社セールスフォース・ドットコムに入社。主に首都圏以外の地域を担当する広域部門の責任者として地域創生とデジタルトランスフォーメーションの推進を経験。2019年、Sales Enablement(営業人材開発)部門の責任者に着任。パンデミック、リモート環境下における人材育成モデル開発に従事。2022年より、コマーシャル営業の統括責任者に着任。
ビジネスにおけるAI活用では、個人利用の延長線上で業務にAIを取り入れるケースと、会社としてセキュリティやルールを定めて活用しようとするケース、このふたつのケースが混在しています。
前者の例として、たとえばメールの添削や返信文の生成、文章要約が挙げられます。これは「来た情報にうまく対応していく」アプローチです。
一方、企業が本格的にAI活用に取り組む場合は、その企業が持つ基幹システムやCRM、SFAに蓄積された商談履歴や顧客情報といった構造化されたデータをどう引き出し、どう活用するかを考えなければなりません。その際は、セキュリティを考慮し、きちんとプランニングする必要があります。
前者は非常に多いのですが、後者の取り組みは企業によってまちまちという印象です。
AIは「営業戦略」をどう変えるのか
──企業の「営業戦略」も、AIによって変わってきていますか。
営業戦略の根幹を「誰に何をどのように売るか」と定義した場合、まず「誰に」というターゲティングや市場分析において、AIは大きく貢献します。 AIがなかった時代から統計的にターゲットを絞ることはありましたが、AIの発展により、その精度や速度が格段に向上してきています。
次に、「どのように売るか」に関わる営業担当者の育成にも、AIは欠かせません。 育成の速度を上げたり、つまずきやすいポイントを事前に特定したり、育成中の担当者が自ら学ぶための環境を整えたりすることが可能になります。
そして、もっとも重要なのは、個々の作業の効率性、いわゆる生産性の向上です。 あらゆるツールが進化し、今まで時間のかかっていた業務が迅速にできるようになりました。
これらを戦略に取り入れることで、1人の営業がどれだけの生産性を上げ、どれだけの業務をカバーできるかを考える時代が来ています。そして、考えていかなければならないと強く感じています。