なぜ「不要論」が生まれるのか? カスタマーサクセスの本質に立ち返る
自社のカスタマーサクセス組織はうまく機能しており、チャーン率が低下し、既存顧客からのアップセル・クロスセルが生み出され、事業成長に寄与している。
こうした話を聞くのは、実はとても稀です。多くの場合、カスタマーサクセス組織がコストセンターとして認識されたり、中には「カスタマーサクセス不要論」を唱える人もいます。
なぜ、カスタマーサクセス組織はこのような状況に陥ってしまったのでしょうか? かんたんに言えば、カスタマーサクセスの活動やそのインパクトが、事業成長、すなわち収益(プロフィット)に直結していないから。多くのカスタマーサクセス組織がオンボーディング担当になってしまい、新規顧客のオンボーディング(製品を使うまでの準備・セットアップ)だけに注力した結果、それ以外の活動が明確な目的を持って行われていないからです。
オンボーディングとは「製品を使える状態に整えること」です。すなわち、顧客は契約した製品からまだ何の価値も得ていない状態と言えます。オンボーディングだけにフォーカスしているカスタマーサクセス活動では、チャーン防止やNRR(Net Revenue Retention/売上維持率)向上への貢献を説明するのは難しいでしょう。なぜなら、オンボーディング段階では顧客が製品から得る価値がまだ限定的であり、継続利用や売上貢献といった成果に直結しづらいためです。
もちろん、オンボーディングが失敗してしまったらアダプション(製品の活用・定着)が始まらないため、重要なステップであることは間違いありません。ここでお伝えしたいのは、オンボーディング“だけ”がカスタマーサクセス活動の本質ではないということです。
では、カスタマーサクセス活動の本質とは何か? それは、次の状態にすること/次の状態になることを阻害する要因を取り除くことです。
<カスタマーサクセス活動の本質>
- いち早く製品が使える状態にする(オンボーディング)
- チャーンされづらい製品の利用状態にする(チャーン抑制)
- アップセル/クロスセルしやすい製品の利用状態にする(NRR 向上)
- 最新の機能を含め、製品の全機能を活かし、業務改善や成果創出といった最大限の価値を得られる状態にする(成功事例や推奨者の創出)
顧客のライフサイクルを考えれば、オンボーディングとはあくまで最初の通過ポイントであり、カスタマーサクセス活動のほんの一部であることは明らかです。
もちろん、カスタマーサクセスに携わる人の多くは、アダプションがカスタマーサクセスの本質であることを理解しているでしょう。しかし、実践が伴っている組織は少ないのが現状です。
なぜ、理解はしていても、実践することが難しいのでしょうか? それは、カスタマーサクセス活動の本質の4つのポイントが定義されておらず、受注からゴールに至るまでの「カスタマージャーニー」へ落とし込めていないからです。そのため、カスタマーサクセス活動の目的がはっきりせず、属人的となり、自社の事業成長に寄与しないカスタマーサクセス組織が増えてしまう。ついには「不要論」まで飛び出す事態が起きているのです。
この課題を解決するためには、カスタマーサクセスの活動と事業への貢献度をきちんと紐づける必要があります。次のページでは、その具体的な実践方法を解説します。