パイプラインを再定義して共通認識を形成
──はじめに、山洋電気の事業内容と小峯さんのミッションを教えてください。
山洋電気はファンや電源関連製品、制御用モーターの開発・製造・販売を行う、創業100年を迎えるメーカーです。私が所属するマーケティング部 第一課は「新規案件の創出」をミッションに掲げ、デマンドジェネレーションに取り組んでいます。
──デマンドジェネレーションにはいつごろから取り組み始めたのでしょうか。
私が入社した2005年から開始しました。当時はマーケティング組織もなく、営業本部内の数人でスタートしたんです。その後、2017年にマーケティング部が立ち上がり、デマンドジェネレーションを担う第一課の課長を任されることに。マーケティングと連携するプロセスは常に試行錯誤してきました。
──2023年に実施したプロセス改革では、UPS(無停電電源装置)を対象としています。さまざまな製品を扱う中でUPSを選んだ背景や、営業活動の特徴などがあれば教えてください。
UPSは停電時でも電気を止めずに供給することができる電源装置で、顧客は官公庁やデータセンター、医療機関、工場など幅広く、長年のお付き合いがあるところが大半です。そのため依頼や入札による受注が多く、新規開拓が難しい領域でした。
当時の山洋電気の収益構成は制御用モーターが半数を占めており、その次がファンで3.5割ほど。電源領域はまだまだ伸びしろがあり、ここに注力する指針を会社として掲げていました。こうした背景から、UPSの新規案件の獲得を目指してマーケティングから営業をつなぐプロセス改革に取り組んだのです。
──これまでもマーケティングと営業をつなぐプロセスは試行錯誤されてきたとのことですが、今回の取り組みにおいて、とくに大きな変化はありますか。
大きな転換点はMAツールのリプレイスです。新しいツールのワークフローに合わせるかたちで、長年運用してきたプロセスを見直したのです。既存のプロセスを再構築するのはエネルギーが必要ですから、良いきっかけになりました。
──新しいツールを導入したものの、プロセスを変更しないことでうまく活用が進まないという話はよく耳にします。
そうですね。ただ、反対にツールをプロセスに合わせても良いですし、そこは企業によって自由に変えて良いと思います。山洋電気の場合はツールに合わせることで、従来のプロセスの曖昧な点に気づきました。個人の勘や経験によって“なんとなく”進捗や確度が分類され、定義や認識にバラつきが生じていることがわかったんです。
今回のプロセス改革では、マーケティングから営業までの全体の流れを取引ステージとして再定義し、パイプラインを構築しました。こうして共通認識を形成できたことも、成果を創出できた要因のひとつだと思います。