型が定着しない原因は「営業マネージャー」?
前回記事【第3回】
営業の「型」をつくったあとに待ち受ける関門、それが「型の定着」です。営業メンバーが型を使いこなせるようになって初めて「売れる組織」が実現できます。
この「定着」という重要なミッションは、日常的にメンバーと接する営業マネージャーに託されます。しかし、多くの場合、営業マネージャーはこのミッションを完遂できません。その理由は主にふたつあると考えられます。
1. 営業マネージャーは忙しすぎる
第2回でも触れたとおり、学んだことについて「やってみる」「できる」というステップを、営業担当者が自力で乗り越えることは難しいものです。本来、この過程には営業マネージャーのきめ細かな介在が不可欠となります。
ところが、多くの組織では、その重要なフォローに手が回っていません。その背景には、営業マネージャーが忙しすぎるという問題があります。
多くの組織では、営業マネージャーは「プレイングマネージャー」であるケースがほとんどです。
チームの目標に加えて個人の目標も追いながら、役員をはじめ上長への予算報告、部下の評価業務や採用面接に入ることもあるでしょう。 さらに、部下の育成業務もあります。具体的には、新入社員のオンボーディングから、オンボーディングを終えたメンバーの目標管理、行動管理、商談(案件)管理まで多岐にわたります。部下が1人や2人ならまだしも、5人から10人近くいることも珍しくありません。
最近は「管理職は罰ゲーム」という言葉も耳にしますが、働き方改革によって残業が規制され、ハラスメントに対する目が一層厳しくなるなど、マネージャーが気を回さなければならないことが雪だるま式に増えています。
日々の仕事やノルマに追われながら、部下への言動にも人一倍気をつけなければならない……。そんな「無理ゲー」を強いられているマネージャーたちがきめ細かなフォローをしていくには、時間も余裕も足りなさすぎるのです。
2. トップセールス、トップマネージャーにあらず
「名選手、名監督にあらず」は、営業の世界でも当てはまります。マネージャーに昇進する人というのは、その多くが営業で成果を上げた人たちでしょう。
私自身もそうでしたが、営業担当者がマネージャーに昇進するタイミングでは指導経験はほとんどないうえに、営業にもマネジメントにも明確な「教科書」がないため、個人の経験則に基づいた指導に終始してしまいがちです。
その結果、何が正解か分からず、忙しさやノルマに追われて苦しんでいるマネージャーも少なくありません。
そのような状況では、部下の育成は「緊急度が低い業務」と見なされ、他の業務に手を取られて後回しになりがちです。
KPIを「型の実践度」を測る羅針盤にしよう
さて、そのような前提もありつつ、営業マネージャーの重要な仕事がKGI(最終目標)/KPI(中間目標)の管理であることに異論はないでしょう。
ここで重要なのは、KGI/KPI管理を、単なる目標達成の指標としてだけではなく、型を定着させるための仕事として捉えるということです。
たとえば、KGIを「売上目標の達成」とした場合、KPIは「架電件数」や「商談件数」といった数値目標を設定するのが一般的です。しかし、型を定着させたいのであれば、もう一歩踏み込んだKPI設計が必要です。
具体的には、「商談後のチェックシート実施率」「ロープレの点数」「トークスクリプトの使用頻度」といった、「型」の定着度合いを測る指標を設定することです。
こうした指標を用いれば、マネージャーは部下の行動を客観的に把握できます。そして、「なぜ目標を達成できないのか?」という問いを、「なぜ型を実践できていないのか?」という本質的な課題に置き換えることができ、自然と型の定着につなげていくことができるのです。