新規開拓を拒む「ゼロイチの壁」
──デジタルセールスが新規開拓を進めてきている中で、どのような課題に直面されていたのでしょうか?
重松 私たちデジタルセールスの強みは、まだ商談が存在しない段階から新しい顧客を見つけて関係を築く「新規開拓」にあります。
しかし、フィールドセールスが作成するアカウントプランは、接点のある部門や稼働資産など、得意領域のテーマを中心にすでに関心の高い顧客の商談をいかに進めていくかを重点においている現状がありました。
ゼロから新規商談を生み出すデジタルセールスにとって、「ホワイトスペースのどの部門に、どんな切り口でアプローチするか」といった、最初の一歩を踏み出す視点が欠けていたんです。部署の業務内容すら分からないことが多く、従来の延長線上では、突破できない。この”最初の壁“こそが、私たちが乗り越えるべき「ゼロイチの壁」とも言える課題になっていました。
──その「ゼロイチの壁」に、どのように立ち向かおうとされたのでしょうか?
重松 フィールドセールスに「新規開拓したい部門を教えてください」と依頼するだけではなく、デジタルセールスから「こういう部門もアプローチできそうです」と、提案型でアプローチ先を提示できるように「攻めの仮説」を提示したいと考えました。しかし、デジタルセールスだけで実施するには知見も工数も足りないため、同じ部門内のプランニングチームに参画してもらうことにしました。

【デジタルセールスの機能紹介】プランニングチーム(オレンジ)、デジタルセールス(赤)
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「攻めの仮説」で切り込む、プランニングチームの役割
──プランニングチームという強力なパートナーとタッグを組んだのですね。そのチームのミッションについて、お聞かせいただけますか?
朝倉 私たちプランニングチームは、顧客の事業戦略や外部情報、富士通のケイパビリティをもとに、攻略プランを立案する専門組織です。外部情報と既存の営業接点や過去の活動実績、そして富士通のケイパビリティを統合し、顧客への最適な貢献を導き出す個社リサーチに基づいた攻略プランを作成しています。
とくに、近年の顧客を取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。これまでの経験や実績だけでは対応しきれず、業態が非常に複雑化しています。たとえば、小売業が金融分野に進出したり、BtoBのビジネスをしていた製造業がBtoCのビジネスに参入したりと、従来の「この業界ならこう」という常識が通用しない、新たな事業領域や部門が多数出現するようになってきています。
こうしたホワイトスペースで新たな接点や商談を創出するには、一見して業務内容が想像できない部門の実態を深く調査し、最適なアプローチを導き出すことが重要だと強く感じています。
そこで、2025年度からデジタルセールスの新規接点開拓と商談創出の支援をミッションに、デジタルセールスとの密な連携体制に進化しました。これまで培ってきた個社のリサーチスキルを活かし、フィールドセールスが顧客と接点を持つ前の攻略プランニングの段階から携わり、「攻めの仮説」を追求しています。

──「攻めの仮説」について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
朝倉 はい。営業が把握している既存のアプローチ範囲や、人事・総務といった共通業務領域は、型化されたアプローチでも開拓可能です。しかし、先ほどもお話ししたとおり、業務内容が不明で、営業接点がないホワイトスペースこそ、新たなビジネスチャンスがあるのです。
顧客の業務が不明であるがゆえにどうアプローチするか、そもそもアプローチできるのか見極めが難しい部署について、事業戦略や公開情報などを活用して徹底的に調査します。そして、富士通のケイパビリティで顧客の課題解決に向けた提案ができそうか仮説を立て、新たな接点開拓へとつなげています。既に接点のある部門へのプランニングも行いつつ、この「攻めのホワイトスペース開拓」を本格的に強化しています。