“知のサイロ”を壊す 全社ナレッジマネジメントシステムの構築
CTCは、「知的資本経営」という羅針盤のもと、「情報活用」と「人材育成」の両輪で改革を力強く推進している。
まず、情報活用の変革では、“知のサイロ”の破壊に着手。営業に役立つ情報を一元化した社内サイト「Sales Compass」を構築し、各部署に散在していた製品情報や販売実績、事例などを集約した。
半年後には認知度は86%に達し、ポジティブな声が多く挙がった。一方で、「必要な情報にたどりつけない」「情報の活用方法がわからない」といったネガティブな声もあった。そこで現在は、情報の活用シーンや方法をプレイブックとしてまとめた「セールスツール活用Tips集」というサイトを新たに構築しているという。
さらにその後、本格的なナレッジマネジメントシステム「Insight Engine」をわずか3ヵ月でリリースした。トップダウンと競争原理を組み合わせた巧みな施策により、社員にナレッジ提供を促した結果、リリース後4ヵ月で126万アクセスを記録。全社の知見が集まるプラットフォームへと成長している。
一方で、集まったナレッジはすべて公開するのではなく、共有する価値があるかを判断する「リリース判定」を実施している。この作業は、ナレッジが増加するにつれて運用負荷が高まったが、生成AIを活用して解決。7つの評価軸(1. 営業・提案への有用性、2. 汎用性・再利用性、3. 最新性・鮮度、4. 資料構造・体裁、5. ストーリー性・説得力、6. CTC独自性・優位性、7. 注力領域との合致度)で資料を自動採点する仕組みを導入し、リリース判定にかかる工数を半分以下に削減した。
“モノ売り”から“コト売り”へ 営業育成の3ステップモデル
一方、「人材育成」の変革では、OJT頼りの属人化した育成モデルからの脱却を目指した。高い目標達成に不可欠な「課題設定型営業」、つまり「モノ売り」ではなく「コト売り」への転換を促すため、ハイパフォーマーの行動特性を分析し、全社共通の「営業コンピテンシー」を策定した。
「『モノ売り』から『コト売り』への転換は、『売り手思考』から『買い手思考』への転換とも言えます。これは右利きの人が明日から左手で箸を使うようなもの。地道に行動変容を促すことが必要です」(五十嵐氏)
そこで五十嵐氏は、従来の「研修」に依存しない営業育成モデルを構築した。営業担当者や上司が直面する壁を特定し、「トレーニング」「コーチング」「シェアリング」の3ステップで科学的にアプローチするモデルだ。
このモデルでは、単に知識を教えるだけでなく、社内外の専門コーチとの対話や、オンラインコミュニティでの学びの共有を通じて、行動変容と習慣化を促す。とくに、部下の学びの定着には上司の関与が不可欠であるとし、マネージャーの巻き込みを重視している点が特徴だと五十嵐氏は語った。