AIと人の知見を融合する「仮説検証型プランニング」
──具体的には、どのようにして「攻めの仮説」を立てているのでしょうか?
朝倉 仮説立案においては、AIの活用が大きな鍵になっています。人手のみでの企業分析や仮説立てでは、2〜3週間、時に1ヵ月もの時間を要し、ビジネスの変化には到底追いつけません。そこで私たちは、AIを積極的に活用して分析時間を約半分に短縮し、大幅な効率化を実現しています。
もちろん、AIによる仮説が常に完璧なわけではありません。どれだけ調査しても、真の顧客課題は直接うかがわないとわからないからです。そこで、プランニングチームの仮説を“たたき台”に、デジタルセールスが顧客にアプローチを行い、そのフィードバックをもとに仮説の解像度を段階的に上げ、ブラッシュアップしていきます。この活動を通じて、ホワイトスペースから質の高い商談を創出していく――これが「仮説検証型プランニング」の中核です。
重松 この取り組みを始めてから、アプローチできる部門が格段に広がりました。フィールドセールスだけでは把握しきれなかった部門に対して、業務内容・課題・提案仮説がセットで提供されるため、非常に心強いですね。

──なるほど。この仮説検証型プランニングの中核をなすAIは、具体的にどのように活用されているのでしょうか?
朝倉 企業のIR情報や中期経営計画、有価証券報告書、ニュースなど膨大な公開情報をAIに要約させることで、調査スピードと精度を高めています。また、とくに公開情報が少ない企業に対しては、同業他社の情報などからAIに業務内容を推測させ、仮説の立案に活かしています。
これらの活用は、ひとつのAIツールで完結するわけではありません。AIにも得意/不得意があるため、それぞれの特性を活かし常に3~4種類のAIツールを使い分けながら調査と仮説立案を効率化しています。しかし、AIは時に誤った情報や、偏りが出るため、最終的な判断や調整は人で行っています。
また、富士通独自の営業のコンディションはAIにはわかりません。フィールドセールスと会話しながら、「AIは良いと言っているが、現場では難しい」といった判断を下しながら、人とAIの“共同作業”が不可欠だと考えています。
──仮説を持つことで、デジタルセールスの活動にどのような変化がありましたか?
重松 新規開拓のアプローチにおいて、「仮説」がとても重要な武器になります。これまでは、組織図を見て「この部門はまだ声をかけてないから」という理由だけでアプローチを始めることが多く、そのため「貴社はDXに力を入れていると思いますが、ご興味はありませんか」といった、幅広くぼんやりした話になりがちでした。これは、アプローチする顧客の業務や課題がわからなかったためです。
しかし、プランニングチームが立てた仮説によって、「貴社の〇〇部門では、既に□□に取り組まれていると思いますが、当社としては△△の実績があります。ご興味ありませんか」と、より具体的で相手の状況にあった投げかけができるようになりました。この変化は、新規アプローチの成果を左右する非常に大きな進歩だと感じています。