OneCRMは会社の資産 “もったいない状況”からの脱却を目指す
──富士通のデジタルセールスは、活動の基盤となるデータプラットフォーム「OneCRM」をどのように位置づけ、どのような情報を共有されているのでしょうか?
村上(富士通) 私たちは、ABSを実践するうえでもっとも重要なのは「顧客をどれだけ深く理解し、それを組織全体に共有できているか」だと考えています。その基盤として位置付けているのが、Salesforceを活用した「OneCRM」です。以前は社内に数十個もあったCRMを一元化し、富士通全体で“顧客情報”を資産として蓄積しようとしています。
現在「OneCRM」には、顧客とのすべての接点、たとえばセミナー参加情報やウェブ閲覧履歴などによるキーパーソンの関心事や、過去・現在の商談情報、顧客の声(VoC:Voice of Customer)など、アカウント(顧客)ごとにOneCRMへ集約しています。

──ABSを推進するうえで、顧客への深い理解は確かに欠かせない要素だと感じます。これほどの情報が一元的にまで蓄積されているOneCRMは、以前から重視されていたのでしょうか?
村上 いいえ。従来、「案件は営業の持ち物」として、OneCRMはフィールドセールスがパイプライン管理のために活用し、商談のステータス更新が中心で非常にもったいない状況でした。加えて、案件の進捗はフィールドセールスがExcelで個別に管理し、チーム内で共有していたのです。さらに「この商談のことはこの人しか知らない」といった営業の属人化にもたびたび直面していました。
しかし本来、CRMに蓄積される情報は会社の資産として活用されるべきです。そして、顧客と営業、そこにデジタルセールスも加わり、双方にとって意味のある商談機会をつくっていく。さらに、顧客との関係を維持・向上していくカスタマーサクセスという役割でも活躍できるはずです。
この状況を変えるため、まずはデジタルセールスが率先してOneCRMへ活動ログを入力し、フィールドセールスがOneCRMにアクセスすれば顧客との新鮮な情報を把握できる状態にしていきました。そのうえで、OneCRMを起点にデジタルセールスとフィールドセールスがコミュニケーションをとり連携することで、より顧客の状況やニーズに寄り添った活動ができるようにしていきました。