「AIで代替できる業務はすべて置き換える」という覚悟
──御社は積極的にAI投資を行われているとのことですが、インサイドセールスにおいては、どのような方針でAI活用を進めているのでしょうか。

私たちISSが掲げるAI活用の方針は、「AIで代替できる業務」と「人間にしかできない業務」を明確に分け、AIで代替できる業務はすべてAIに置き換えるというものです。AI活用は、あくまで「成果を生むための手段」であると明確に位置づけています。
──AIで代替できる業務と、人間にしかできない業務をどのように定義されていますか。
私の定義では、営業活動におけるもっとも重要な時間を、世の一般的な「2:8」の法則に照らし合わせ、全体の2割と見ています。この2割とは、複雑な状況判断や、顧客の感情的な機微を読み解く緻密なコミュニケーションが求められる「顧客と相対する時間」です。
AI活用の真の目的は、この人間でしかできないコアな2割の業務に100%の力と時間を割くことです。その手段として、8割に分類されるほかの業務をいかに代替・削減できるかが重要となり、我々はおおよそAIで代替できると確信しています。
非コア業務を月約3,000時間削減 受注金額は130%に増加
──2割のコア業務に集中できる環境をつくるために、具体的にどのようなAI活用に取り組まれていますか。また、その成果も教えてください。
インサイドセールスの大きな負担となっていたのが、架電ログの手動入力です。この非コア業務をAIに代替させることで削減できた時間を、コア業務に充てられると考えました。そこでまず取り組んだのがAIによる架電ログの自動登録です。
外部ツールと連携し、架電の音声データをAIが解析します。解析されたデータは、設定したプロンプトに基づいて自動で整形・登録され、SFAやCRMに記録されます。これにより、ボタンひとつで入力作業が完了するようになりました。
その結果、現場では入力工数の大幅な削減が実現しています。手作業で1件あたり約5分かかっていた記録時間が数秒に短縮された結果、インサイドセールス組織全体で月間約3,000時間もの工数が削減されました。

また、架電ログの「質と量」も飛躍的に向上しました。以前は平均50〜60文字だった架電ログが、AIによる整形によって約1,200〜1,300文字の詳細な要約となり、顧客理解を深めた状態で次のアプローチに進めるようになりました。
さらに、このAIが整形したデータは、フィールドセールスへの「パス情報」の充実にもつながっています。自動登録を2025年8月1日に組織全体で開始したところ、約1ヵ月後には受注率が5〜10%向上し、受注金額は130%に増加しました。この成果は、データの質と量の向上が、フィールドセールスの商談準備に大きく貢献したためだと分析しています。
そして、マネジメント層における活用が進んだことも大きな成果です。AIが架電ログやパス情報を自動で整形し、複雑な統計学的な分析まで行ってくれるようになったことで、意思決定の判断時間短縮と精度の向上につながっています。
