単一プラットフォーム構造×AIによるデータの有効活用
非構造化データとは、オンラインミーティングでの会話ログなどを指す。

最近のCRMにはAIが標準搭載されており、具体的な機能として、顧客の行動履歴から最適な商材や売れる可能性の高い商品を提案するレコメンデーション、商談の進行状況をもとに成約率を示す需要予測・購入確度予測、さらにマーケティング活用のためのコンテンツ生成などがある。
そのほかにも、部門や役職名の統一、名寄せ、表記ゆれを修正するデータ品質向上機能、業務補助・自動化を支援するAIエージェント機能も備わっている。
田村氏によれば、これらは構造化データと非構造化データの活用によって実現しており、このようにAIが組み込まれたCRMが「Smart CRM」である。
「従来のCRMは目的や部署ごとに分かれた構造でしたが、Smart CRMはデータや顧客接点を一気通貫で管理し、全機能が統合された単一プラットフォーム構造になっています。設定も、エンジニアによる複雑な作業を必要とせず、ノーコードで行うことができ、現場も直感的に使えるため運用や定着がしやすいのが特徴です。そのため、各部門が業務を進める中でお客様のデータがどんどん蓄積され、それをさらにAIを通じて有効活用できるようになります」(田村氏)

Smart CRMを活用することで、AIエージェントに代表される「日常業務の自動化・最適化」、施策の提案や意思決定を支援する「パートナーとしてのCopilot」、個々の興味に基づくパーソナライズ対応を可能にする「リアルタイムコミュニケーション」、そしてAI活用全般が目指す「人とAIの共存・新しい働き方」を実現するという。
AI機能「Breeze」を搭載 最新HubSpotが提供する価値
このSmart CRMの代表格が、世界135ヵ国、約25万8,000社が導入しているHubSpotである。最新のHubSpotは、顧客データ管理機能に加え、マーケティング・セールス・サービスなど業種・業務別の6つの製品群(Hub)、さらにAI機能を統合したSmart CRMとなっている。

中でも注目すべきが、AI機能「Breeze」だ。
「Breezeは大きく4つの機能を備えています。とくに、対話型アシスタントの『Copilot』、自律的に業務を実行する『Agents』、データの拡張や分析・洞察をする『Intelligence』の3つが特徴的です」と田村氏は評する。
CRMとして初となるChatGPTとの公式連携機能を搭載し、AIエージェントがデータを参照するための規格(MCP)に対応するなど、AI活用との親和性が高い形となっている。
それぞれを見ていくと、Copilotは会話型UIで、顧客に関する質問を入力するとウェブやCRMデータから情報を要約し、過去のやりとりの履歴も確認できる。質問のテンプレートも用意されており、かんたんに必要な情報を入手できる。
Agentsは、いわゆるAIエージェント機能である。ウェブサイトやブログ、FAQなどから学習して回答する自動チャットボットの「顧客対応」、ブログや導入事例の下書き、SNS投稿を自動作成する「コンテンツ」および「SNS」、見込み顧客へのメール送信タイミングを提案し、下書き作成や自動送信まで行う「案件創出」、カスタマサポートのやり取りに基づいてナレッジベースの記事を自動生成する「ナレッジベース」の5種類のエージェントが用意されている。
Intelligenceは、Smart CRMを実現するためのデータ拡張機能である。顧客データベースに売上、業種、会社住所などを付与するデータ拡張(データエンリッチメント)のほか、どの企業が自社ウェブサイトのどのページにアクセスしているかをIPアドレスベースで参照し、新規登録できる機能や、訪問者入力フォームの短縮機能などを提供する。
さらにBreezeでは、営業レポート作成や、ZoomやTeamsと連携して要約を作成する「コミュニケーションインテリジェンス」など、AIを活用した業務迅速化の機能も実現している。
営業現場での活用事例としては、最新情報を基に商談提案書を自動で作成するケースや、商談の議事録作成およびネクストアクションの確認、顧客の行動データからインサイトを得るような活用方法があるという。