BDRを“起点”に、営業プロセスと役割分担を変革
──課題解決に向けて、2024年10月からセールスプロセスの改革に取り組まれています。とくに、営業組織における改革のポイントを教えてください。
大きく分けて、商談獲得と受注のふたつの観点から改革を進めました。
まず商談獲得においては、BDR(Business Development Representative)を営業プロセスの起点としました。一般的な分業体制では、マーケティングによるリード獲得から営業プロセスが始まります。さまざまなチャネルがある中で、フルカイテンの場合、BDRによるダイレクトなアプローチがもっとも効率的に商談を獲得できていることがわかったのです。そこで、BDRを営業プロセスの最前線に置こうと決断しました。
また、受注という観点からも改革を行いました。これまで新規受注は営業が担当し、既存顧客へのアップセル/クロスセルはカスタマーサクセスが担当していました。しかし、フルカイテンのカスタマーサクセスは小売業界での勤務経験者が多く、業界知識は豊富ですが営業経験が少ないメンバーが多い。一方で、営業メンバーは商機の判断やSFA活用のノウハウがあります。

そこで、新規・既存を含むすべての売上責任を営業が持ち、カスタマーサクセスは解約阻止と顧客との関係構築に集中する体制に変更しました。それぞれの強みを活かした役割分担に再編成したのです。
──BDRを営業プロセスの先頭に置いたことで、顧客へのアプローチはどのように変化したのでしょうか。
BDR改革の核となるのは「1to1アプローチの強化」です。ターゲット企業へのダイレクトメール送付や、エンタープライズセールスのトレンドである“手紙”を活用したアプローチなど、さまざまな角度から個別のアプローチを徹底しました。
また、商談を控えているお客様への課題アンケートも実施しています。これまでは決算書やニュースから顧客の在庫課題を推測していましたが、アンケートの質を高めたことで、営業が初回商談時に具体的な仮説を持って提案できるようになりました。
アンケートをきっかけに、お客様自身が自社の本質的な課題に気づくこともあります。課題が明らかになれば、提案も軌道修正しやすく、成約の可能性がさらに高まります。
──マーケティングの役割も変化したのではないかと思います。
そうですね。従来は展示会やウェブ広告といったリード獲得施策に取り組んでいました。現在は経営層に向けたセミナー企画や事例の収集など、質の高いコンテンツ制作に注力しています。BDRのアプローチに“新たな切り口”を提供する役割ですね。
マスマーケティングの優先度を下げたとも言えますが、とはいえ、認知形成も重要であることに変わりありません。お客様がフルカイテンを知っているかどうかで、アプローチの難易度はぐっと変わりますから。現在は広報が業界への啓蒙やプロダクト認知向上の役割を担い、BDRの活動を間接的に支援しています。