パートナーセールスの目的・潮流が変わっている
パネルディスカッションに入る前に桂川氏は、現状を整理するために、会場の参加者に対して自社(各自の事業)のパートナーセールスに対する取り組み状況について挙手でのアンケートを実施。結果は、「これから始めることを検討している」が2割程度、「数年実施している」が過半数、「それ以上実施している」が1割程度となった。

東証プライム社員5,000人のメーカー系商社で、SE・法人営業を経て、10年超にわたりPMMとして事業を管轄。BtoBマーケティング全域およびアライアンスを展開後、全社のデジタルマーケティング戦略を担う。才流ではパートナー支援事業の責任者およびコンサルタントとして活動。ITサービス、製造業などの業界を中心に、BtoBマーケティング、パートナー戦略などの支援を行っている。
アンケート結果が示すように、すでに多くの企業がパートナーセールスを実施しているが、桂川氏は最新のパートナーセールスに関する考え方について、「パートナーセールスは、“案件マッチング”ではありません。単なる営業手法ではなく、事業戦略という視点で捉える必要があります」と強調する。
「パートナーセールスの潮流を振り返ると、数年前はSaaSベンチャー企業を中心に販路拡大や営業リソース不足の補完を目的に始める会社が大多数でした。今はベンチャーと大企業、大企業同士、ベンチャー同士というかたちで、対等なパートナーとの共創という側面が注目されています」(桂川氏)

パートナービジネスの目的も、多岐にわたるようになっているという。
「数年前はマジョリティ層へのリーチでしたが、現在は市場の開拓が注目されています。たとえば民間から文教へ、文教から自治体へといった新規セグメント開拓、ユースケースの深掘りなどです。そのほかに、新たなビジネスモデルの開発も盛んになってきています」(桂川氏)

2社が語る「パートナーセールスにおける組織設計のポイント」
桂川氏がパートナーセールスの現状を整理した後、組織づくりと実際の成果に関する5つのテーマのもとでパネルディスカッションが行われた。

まず組織設計についてマネーフォワードの守屋氏は、「パートナーセールスとフィールドセールスの営業組織をどう運営するか」という問題を提起する。同社ではこれらの組織を分けているとし、その理由について「パートナーに向き合ってパートナーをグロースさせるという役割と、実際に案件が発生した際にそれをクロージングする役割では、セールスとして求められるスキルや特性は違うため」と説明した。

一方セーフィーでは、2024年度からパートナーを“支援”する組織を「営業」と「企画」のふたつの部隊に分けたという。その理由として鈴木氏は、「パートナービジネスはすそ野が広く、KPIも求められるケイパビリティも異なってくるため」と説明する。

両氏の話を受け桂川氏は、「直販とパートナーセールスの組織を分けると、バッティングや他部署との調整という問題が生ずるが、そこをどう解決するのか」と問題を投げかける。
守屋氏は、「シンプルにルール化して決めるしかない」と回答。同社では基本的に、先に商談が発生したほうを優先しているという。
「大事なのは、パートナーに『我々はこういった見方で、ルールを決めて営業を進めている』といった決まりを理解してもらうことです。そのプロセスを守ることが重要です」(守屋氏)

鈴木氏も、「最初にパートナーにそのスタンスを説明していくことは重要です」と同意する。バッティングに関しては、同じものを売る都合上ある程度は起きるとしたうえで、「パートナーの事業の特性を活かして、同じ商材でも同じ売り方にならないように調整するとか、そもそも違うものにしていく発想が必要だと考えています。それをセーフィーでは、『共創プロダクト』というかたちで展開しています」と語る。