パートナーの営業力を因数分解しモニタリングする
次のテーマは、KPIや育成・採用について。セーフィーではパートナーセールスの企画と営業を分けたが、その際に人材については、企画側は事業開発の専門人材、営業側ではエンタープライズ営業を経験している人材の採用を考えているという。理由としては、「企画では、パートナーの事業をどう捉えるかという観点が必要になります。パートナービジネスの営業というと拡販と捉えられがちですが、最近はより本来の営業の要素が求められるようになっています」と鈴木氏は説明する。
KPIについては、企画の側面では「どういうプロダクトをつくりパートナーに展開しているか」、営業の側面では「予算をどう達成していくか、パートナーと受注に向けて一緒に進めていけたか、自社のサービスを売ってもらえている営業の人数など」を挙げる。
「営業は短期の目線で数字を追いがちですが、パートナービジネスは成果が出るのに時間がかかるので中長期の目線で見ていく必要があります。そういった意味で組織を分けました」(鈴木氏)

マネーフォワードでも、担当する役割や領域によって、それぞれのKPIが変わってくるという前提を踏まえたうえで、受注金額といった結果だけでなく前段階のモニタリング指標を重視しているという。
「パートナーA社の営業の中に何人マネーフォワードの商品を理解している人がいるのか、仮に10件販売してくれた際に何人が売ってくれたのかなど、A社の営業の因数分解をして売れる力を可視化しておくことが重要です。あくまで評価は結果指標に置きつつも、日ごろのモニタリングや、その先を見通すためにモニタリング指標を大事にしています」(守屋氏)
パートナーセールスの成功事例とこれから
そのような組織設計のもとで事業を展開する両社のパートナービジネスの売上比率については、セーフィーでは約5割がパートナーの売上で、マネーフォワードは非公表である中で、売上は「直販」「士業向けのパートナービジネス」「士業以外のパートナービジネス」という順になっているとのこと。
才流の定義によると、パートナービジネスが成功している企業はパートナービジネスの売上構成比が3割以上であるという。桂川氏は「あくまで目安」としたうえで、「正直、注力をしなくてもパートナー売上比率は1割程度なら達成可能です。しかし、非連続で成長するためには3割以上を目指すと良いと考えています」と解説した。
パートナーとの間でお互いの事業成長に寄与した事例に関しては、セーフィーは「パートナー協業先を含めた産学官連携で、医療機器を載せた診療カーを活用したオンライン診療サービスを実現」したケースを紹介。同サービスでは、セーフィーが出資をしているMUSVIのテレプレゼンスシステムを活用しており、通信領域でNTT東日本と連携して仙台市と仙台市医師会に共同提案し、遠隔診断サービスにつなげたという。今後は、「成功モデルがつくれたので、それを営業チームが主導して横展開していきます」(鈴木氏)とのこと。

守屋氏は、ふたつの事例を紹介。ひとつめはSalesforceとプロダクトをクラウド連携したもので、Salesforce上の商談データからワンクリックで契約書の作成と送信ができるようにすることで、顧客に対してそれぞれ1社だけでは生み出せなかった価値を生み出した事例となっている。ふたつめはSB C&Sとの事例で、同社がディストリビューターとしてパートナーである代理店の間に入ることで、1,000社以上の受注が生まれたという。
「多くのパートナーがいる場合、すべて直接取引にしていくとオペレーション負荷がかかります。SB C&Sが全国に持っているパートナーリレーションや専門部隊と、当社のプロダクトやドメインのチーム、販売ノウハウをかけ合わせることで成果を出すことができました」(守屋氏)
パネルディスカッションの最後に、ふたりがそれぞれ参加者に対してメッセージを送った。
「どこから買っても一緒の商材はパートナーから選ばれにくくなっているので、アプローチに変化をつけていくことが大事になります。売り方に関しては、一緒に攻めていくという姿勢が大切です。たとえば、パートナーにとって重要な顧客の受注をこちらから取ってくるこなど、営業的な要素を強く出して一緒に攻めていけると良いかと思います」(鈴木氏)
「パートナービジネスはまだまだ正解がないと思っています。我々の取り組みも、まだ一例に過ぎません。会場に来た皆様とも、情報交換をしながらこれからさまざまな取り組みを進めていけることを期待しています」(守屋氏)