これからの営業は「発散」と「収束」に分かれていく
──組織をゼロから設計し直すという話がありましたが、そうした変化の中で、キャリアの方向性に悩む営業パーソンも多いと思います。何かアドバイスはありますか。
営業の役割はこれから大きくふたつに分かれると考えています。「発散型」と「収束型」です。発散型とは、お客様の課題をディスカッションの中で広げ、論点を増やしていく役割。収束型とは、出てきた論点を整理し、優先順位をつけてプロジェクトに落とし込んでいく役割です。
自社の商品やサービスを顧客の課題に当て込んで売るスタイルは、AIでほぼ代替されると思います。論点を整理し、優先順位を決め、タスクに分解する収束の作業は、まさにAIの得意領域です。現代のSaaS営業に携わってきた方の6〜7割は、この収束型をずっと学んできたのではないでしょうか。
収束だけをやっていると、「AIに代替される営業のできあがり」になってしまう。人間の付加価値は、実は発散のほうにあります。発散が苦手なら鍛える訓練は絶対にやったほうがいい。発散が得意な人は、収束をAIに任せるか、もっと発散を伸ばしていけばいい。

──マネージャーの立場では、どのように組織を変えていくべきでしょうか。
マネージャーの多くは収束に価値を置きすぎています。「どれくらいのリードタイムで受注できるか」「決裁者は特定したか」など、これらはすべて収束側の議論です。発散側のマネジメントもやらないと、本来解くべきではない課題を解いているケースが出てきて、成果にもつながらない。
たとえば初回商談を思い切り「発散」に振ろうという目標を立てるだけでも現場の行動は変わります。営業資料を使わなくていい。商品紹介もしなくていい。お客様が目指すゴールを一緒に言語化して、自社への期待値を上げることだけを初回の目的にする。それだけで、今の組織から一歩変わることができると思います。
──最後に、おすすめの書籍を教えてください。
営業系ではデール・カーネギーの『セールス・アドバンテージ』(山本望 訳/創元社)。自分が取り組んでいることを論理的に言語化してくれる本で、自身の営業の体系化が進んでいない方におすすめの1冊です。
もう1冊は『イン・ザ・メガチャーチ』(朝井リョウ/日経BP 日本経済新聞出版)。最近のベストセラーとしても話題ですが、推し活を切り口に、人が何かを好きになるロジックを掘り下げるような小説だと感じました。ある程度スキルが身についてきたビジネスパーソンには、営業と関係のない本からアナロジーで思考をつなげる力を伸ばすことをおすすめしたいです。まったく違う分野からヒントを得ることで、営業力はさらに伸びるはずです。
━━藤本さんが、営業の面白い未来をつくっていかれるのだろうなと感じています。ありがとうございました!
