営業戦略は、営業活動の「設計図」
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営業戦略とは、単なる「営業活動の計画」のことではありません。それは営業組織にとって、建設における「設計図」のようなものです。
設計図がないまま家を建てれば、手戻りや無駄が増えるでしょう。同様に、戦略なしで営業を進めると、行動にブレが生じ、非効率になり、成果も不安定になります。営業戦略の立案とは、「限られた時間と人員」という資源を最大限に活かし、最短距離で成果を出すための「知的な設計作業」なのです。
ここ数年で、営業戦略の重要性についての認識はかなり広まってきました。しかし、実際の現場では、過去の成功体験や個々の勘に頼った属人的な戦略立案が多く、成果に結びつかないケースも少なくありません。
【実際のケース】ある営業が陥った“過去依存”の戦略立案
たとえば、実際の現場であった実例として、あるセキュリティベンダーの営業担当者が、東北エリアの営業戦略を立てる際に次のように判断しました。
「昨年度、東北地域での製造業の案件が前年より多かったから、今年は東北エリアの製造業に力を入れるべきだ。製造業向けのセミナーを各県でどんどんやろう」
一見すると、受注データに基づいた合理的な戦略のように見えます。しかし、これは「自社が動いた結果」でしかなく、見えているのはすでにアクセスした顧客だけです。未来に向けた営業戦略としては、実はリスクの高いアプローチと言わざるを得ません。
本当に重要なのは、「今後、どこにもっとも大きなチャンスがあるか」をデータを使って予測し、未来に向けたリソース配分を決めることです。受注データだけを見ていると、視野が狭まり、同じ業種やチャネルに偏ってしまう可能性があります。
そこで鍵となるのが、「第三者データ」を活用した「仮説思考」です。これにより、まだ見えていなかった市場や有望なターゲットが明らかになり、戦略の精度と広がりが格段に増します。
仮説思考を活用した営業戦略立案こそが、これからのビジネスにおいて不可欠なのです。
「仮説思考」を活用した営業戦略立案とは
「仮説思考型の営業戦略立案」とは、限られた情報やデータから「どこに勝ち筋がありそうか」「何に注力すべきか」といった見立てを立てる思考プロセスのことを指します。
完璧な情報がそろうのを待って戦略立案に時間をじっくりかけるのではなく、最低限の情報からすばやく市場構造や顧客ニーズを読み解き、優先順位を定めながら、仮説ベースで方針とアクションを策定。さらに、一度立てた戦略を、動きながら柔軟に修正・改善していく──。
こうしたスピードと柔軟性を兼ね備えたアプローチこそが、変化の激しい営業現場で成果を上げ続けるための“戦略の武器”となります。