「売上を期待し効率化に留まる」日本の生成AI活用の今
「日本のBtoB営業は、構造改革の真っ只中にある」と小髙氏は言う。
顧客ニーズの多様化と複雑化、業界・グローバルの垣根を越えた競争激化、労働人口の減少……厳しいビジネス環境の中、営業職は忙殺され、1日のうち20~30%しか顧客折衝の時間を設けられていないのが現状だ。
小髙氏は「『人』を前提とした営業活動は本当にサステナブルなのか」と疑問を呈し、売上500億円以上の大企業のうち、68%がすでに生成AIを活用しているというデータを示した。
データから見ても、生成AIの導入はもはや「前提」であるとして、講演のテーマに「生成AIによる営業モデルの再定義」を掲げた。
PwCコンサルティング合同会社 パートナー フロントオフィス&エクスペリエンス事業部 上席執行役員 小髙 一慶氏
外資コンサルティングファームにて営業改革、CRM、デジタルマーケティング領域における業務プロセス、システム改革、事業立ち上げに関わる各種コンサルティング(戦略策定から推進実行、導入支援等)に従事。その後PwCコンサルティング(同)に入社し、現職に至る。ハイテク、製造業、通信、メディア、エンターテインメント業界を中心とした、B2B営業改革、CRM、B2Bデジタルマーケティング、業務/プロセス改革、顧客体験設計、チェンジマネジメントの経験を広く有する。HEC Parisにて経営学修士(MBA)を取得。
多くの企業は「生成AIは営業の役割を減らすものではなく、役割を分化・専門化するもの」と捉えている。業務特化型AIやCRM付帯AI、自社開発AIを活用し、組織として業務最適化に取り組む企業も存在するという。しかし日本企業の場合、生成AIに売上成長を期待しながら、実際には生産性向上やコスト削減で効果を実感しているケースが多い。
一方でグローバルでは、すでに生成AI活用による収益や顧客体験向上が問われている。この「問いの差」が競争優位性の差を生み出すと小髙氏は警鐘を鳴らし、日本企業の生成AI活用の進展を阻んでいる構造的な壁を3つ挙げた。
1.トップダウン/戦略不在の壁
生成AI導入の目的が明確に定まらないまま、経営層のトップダウンで導入に着手し、現場が混乱する。
2.成功体験獲得の壁
PoCに取り組むも、売上成長など期待する成果を創出できず、生成AI活用の難しさを実感するのみで終わってしまう。
3.組織ケイパビリティ不足の壁
生成AIの活用を組織的に拡大するための土台(データ基盤、ガバナンスなど)が整っていない。
「生成AI活用は技術の問題ではなく、経営資源をどのように配分するか、『営業の勝ち筋』をどのように描くかが肝要。成功するも失敗するも『人』にかかっています」(小髙氏)

