「全力遠回り」と呼ばれた男
──現在は新規事業の責任者としてご活躍されていますが、キャリアのスタートは順風満帆ではなかったそうですね。
ええ、まったく(笑)。2013年に新卒2期生として入社したのですが、正直に言うと、あまり優秀な営業ではありませんでした。同期は2年めで新規事業を立ち上げたりしていましたが、僕は3年めくらいまで本当に「鳴かず飛ばず」で。代表の日紫喜からも「『全力遠回り』だな」とずっと言われていたくらいです。
ただ、営業という仕事自体は好きでした。当時担当していた北陸地域では、経営者や決裁権を持つ責任者の方と直接お会いできる機会が多かったんです。
そこで経営者の方々のシビアな感覚に触れられたことが、今の自分の原点になっています。「この広告にこれだけ投資するということは、スタッフの人件費何人分だから、これくらいの効果がないと困るんだよ」──そんな生々しい声を浴び続ける日々でした。お客様の生の声を聴くという泥臭い経験が、今の新規事業の企画・開発に活きています。
「競争と協調」を生むメカニズム
──営業組織にあった課題があれば、教えていただけますか。
営業同士が切磋琢磨し、ナレッジを学びあう機会が不足しているという点です。
もちろん、新卒の最終ロープレを社長自らが行うなど、商談の質を担保する文化はありました。しかし、継続的に成功事例をシェアし、組織全体のレベルを底上げする「仕組み」までは整っていなかった。
そこで立ち上がったのが、全社横断の営業プロジェクト「Hibana(ヒバナ)」です。
──Hibana、ですか。
はい。私たちはお客様と接するその瞬間を「火花が散る瞬間」と表現しているため、そこから由来しています。異なるサービス・チームに所属している営業全員が、同じ軸で価値提供力を磨くために生まれた取り組みで、四半期に一度「Hibana Best Award」を開催します。
Hibana Best Awardの特徴は、総合的な判断を行う一般的な表彰とは違い、あえてシンプルに「営業成績のみ」を評価軸にしたことです。「競争と協調」という言葉をよく社内で使いますが、まずは明確な数字で競争心を掻き立てる。
その一方で、受賞者には「なぜその成果にたどり着けたのか」というプロセスをスピーチしてもらいます。競争の結果生まれたナレッジを、組織全体に還元して「協調」をつくる。このサイクルを回すことで、組織の「血流」を良くしようと考えました。

