NGケース3:クロージングが強引
3つめの失敗ケースとしては、商談のクロージングでの次のようなやりとりです。
【NG例】
営業:一度うちの製品のトライアルをしてみませんか?
顧客:……そうですね、社内で検討してみます。
このように、営業がお客様にYESかNOの2択の返事を迫るクローズドクエスチョン(“Would you like to try our product?”)をしてしまうパターンです。
商談相手が決裁者であれば、その場で決断してもらえる可能性が高いでしょう。しかし決裁者以外の場合は、自分だけの判断ではYESとは言いづらいため、「検討します」という返答で商談がストップしてしまうケースが多く見られます。
お客様から前向きなコメントを頂くには、次のような言い回しに変えてみるのが効果的です。
【Good例】
営業:今日の打ち合わせでお聞きした内容からすると(事実)、まずは御社の状況にフィットするのかどうかを確認しないと、上層部の方を説得できないのかなと思いまして(仮説)。
いったんシステム部の中で2週間ほどトライアルをしてみていただくのが良いのではないかと思うのですが(提案)、こちらの進め方について、〇〇様はどう思われますか?
顧客:そうですね、たしかにいったんうちの部内で見てみるのが良いかもしれませんね……。
ここでのポイントはふたつあります。ひとつは、商談中にヒアリングした事実に基づき、次に進むべきステップ(トライアル)を仮説として提案している点です。これにより、営業の説得力とお客様の納得感が高まります。
もうひとつは、クローズドクエスチョンではなく、オープンクエスチョン(“What do you think of this plan?”)で質問をし、相手からの感想や意見を促している点です。YESかNOで迫らないことで、お客様から次につながるヒントになるようなコメントを引き出しやすくなります。
まとめ:資料の型から「会話の型」へ
初回商談を突破するには、仮説提案資料の型をつくるだけでは不十分です。仮説提案営業を「営業組織全体のスキル」として根づかせるためには、個人の経験や勘に頼らず、商談コミュニケーションの再現性を高める必要があります。そのためには、「対話型コミュニケーションの型」をつくることが、重要なのです。
今回の記事でご紹介した3つのNG例に共通するのは、すべて「一方向の説明」に偏っているという点でした。
私が提唱している「対話型コミュニケーション」のポイントは、次の3点です。
成果につながる対話の3つのポイント
- 冒頭で合意形成を図る: 仮説は暫定(仮のもの)であると明示し、ディスカッションのスタンスで臨む。
- 複数回の深掘りヒアリング:質問を重ね、顧客の「課題の事実」と「潜在的な意図」を合わせる。
- オープンクエスチョンで次の一手へ:YES/NOを避け、オープン質問で顧客の評価軸や関係者を引き出し、具体的な次の一手を共につくる。
これらの「対話型コミュニケーション」を繰り返すことで、「提案の質」と「顧客の共感」を両輪で高めることができるのです。
次回は、この「対話型コミュニケーション」を組織全体でどう標準化し、再現性高く成果を出すのかについて、実際の営業組織での成功事例を交えながら、具体的な実践ステップを解説します。
