商談の「会話の流れ」、個人任せにしていませんか?
前回記事【第5回】
前回記事では、初回商談突破の鍵として、顧客を主語とする「仮説提案資料の型」(想定課題 → 解決策 → 導入効果 → 事例)のつくり方を解説しました。
しかし、提案資料を型化しても、「商談が進まない」「成果にバラつきがある」といった課題は多く残ります。
その原因は、商談の「会話の流れ」を個人任せにしている点にあります。資料を型化しただけでは、商談時のコミュニケーションエラーは防げません。この小さなエラーの積み重ねが、チーム全体の商談突破率向上を阻んでいます。
本記事では、この課題を解決するため、膨大な数の商談分析結果からわかった商談コミュニケーションの“定番のNGパターン”を3つご紹介します。そして次回の後編では、その「商談の会話そのもの」をどう標準化し、チーム全体で再現性高く成果を出すのかについて、実践ステップを紹介します。
NGケース1:商談の目的が「製品紹介」となっている
商談冒頭でもっとも多い失敗パターンは、目的を「本日は製品をご紹介させていただきます」と伝えてしまうことです。
【NG例】
本日はお時間をいただきましてありがとうございます。
本日は弊社の製品をご紹介させていただきます。どうぞよろしくお願いします。
これを聞いたお客様は、「製品紹介か……。使いまわしの資料を使って一方的に売り込みをされるだけだ」と感じ、受け身のスタンスになってしまいます。これでは信頼関係が築けず、お客様の本音を引き出せません。せっかく用意した仮説提案資料の効果が100%発揮できなくなります。
商談の冒頭では、まず「お客様からの信頼を勝ち取る」ことに全力を注ぐ必要があります。 そのためには「お客様のために仮説を立ててきたこと」と「一方的な説明ではなくディスカッションがしたいこと」を明確に伝えることが重要です。
以下が、冒頭に話す目的説明のサンプルです。
【Good例】
本日はお時間をいただきまして、ありがとうございます。
せっかく〇〇様の貴重なお時間をいただきますので、貴社の事業成長に弊社がどのように貢献できそうかについて、私なりに仮説を立てて整理してまいりました。
ただ、あくまでも私自身の解釈であり、現在の実情と違う部分もあるかと思います。 実際の課題感をヒアリングさせていただき、〇〇様のご意見もおうかがいしながら、我々がどのようなご支援ができそうか、ディスカッションさせていただければ幸いです。
そのうえで、もし弊社がお役に立てるようであれば、次回以降に具体的なご提案をご用意させていただきたいと考えております。
このような進め方でよろしいでしょうか。
このように、「製品紹介をするのではなく、御社の課題に対して一緒にディスカッションがしたい」ときちんと伝えるだけで、商談冒頭で信頼関係を意図的に築くことができ、共創するスタンスになってもらうことができます。
また、最後にお客様からの合意を得ることで、お客様が自社の内情を本音ベースで話しやすい雰囲気をつくることができ、商談を前進させやすくなります。

