セールスイネーブルメントをビジネス成果につなげる「必須要素」
現在、多くの企業が注目している「セールスイネーブルメント」。セールスイネーブルメントとは「本質的には効果的に営業チームをサポートする方法にまつわる役割(または部署)、役職、増え続ける知識体系」(p.21)を意味する。
この言葉が登場する以前から、多くのリーダーや組織が同様の活動を実践してきた。一方で、セールスイネーブルメントの一般的な定義は存在せず、共通認識も基礎的なものに留まっている。
こうした現状を踏まえ、「効果的にセールスイネーブルメントの役割を開始または進化させ、ビジネスの成果につなげられるようにする」(p.27)ことを目的として執筆されたのが『THE BUILDING BLOCKS ビルディングブロック式セールスイネーブルメント 営業パフォーマンスを劇的に変える実践的戦略』(マイク・カンクル 著、猪瀬竜馬 訳・監修、幻冬舎メディアコンサルティング)だ。
本書では、30年以上にわたり営業職および営業変革・トレーニングに携わってきたセールスイネーブルメントの専門家、マイク・カンクル氏が、自身の経験を通じて、セールスイネーブルメントのフレームワークである「ビルディングブロック(構成要素)」を整理している。
ビルディングブロックは、「営業チームが最大限の力を発揮して行動する際に必要となる要素」(p.29)だとカンクル氏。第1章において、セールスイネーブルメントを構成する12のビルディングブロックを挙げた。
セールスイネーブルメントのビルディングブロック(構成要素)
顧客理解、バイヤー(顧客)エンゲージメントコンテンツ、営業サポートコンテンツ、営業の採用、営業トレーニング、営業コーチング、営業プロセス、営業メソッド、営業分析と指標、セールステックとツール、営業報酬、営業マネージャーイネーブルメント
これらのビルディングブロックは、「コミュニケーション(営業チームにとってのコミュニケーションの接点と、組織横断的なコミュニケーションおよび連携の醸成の両方)」(p.41)と、システム思考により支えられている。
組織横断でのイネーブルメントを実現する「システム思考」
システム思考について、本書ではダニエル・H・キム氏の定義を引用している。
システムとは、特定の目的を有する複雑かつ統合された全体を形成する、相互作用性、相互関連性、または相互依存性を持つ部分からなる集団である。(中略)覚えておくべきなのは、あらゆる部分になんらかの相互関連性と相互依存性があるということだ。こうした相互依存性がないのであれば、私たちはシステムではなく一部分の集合でしかない。【訳注:「『Introduction to Systems Thinking(システム思考の紹介)(未邦訳)』】(本書p.42)
こうした相互連携するシステムの中でも、もっとも優れた成果を生むシステムとして、カンクル氏は「営業の採用システム」「セールスレディネスシステム」「営業トレーニングシステム」「営業マネジメントシステム」を挙げた。これらの4つの営業システムがセールスイネーブルメントのビルディングブロックを支えると同時に、ビルディングブロックと相互作用することで「組織横断的な連携を生む」(p.44)のだ。
ビルディングブロックは重複する面も多く、それらすべてが組み合わさって統一感をなすとカンクル氏。しかし、必ずしも一連のステップとして順を追って取り組む必要はないという。自社の場合はどのビルディングブロックに注力すべきか、「状況に応じて使用が可能」(p.44)なのだ。
そのため本書では、ビルディングブロックごとに章を設けて解説するほか、セールスイネーブルメントを開始する方法や、パフォーマンスベースで営業オンボーディングを行う方法も解説している。
これからセールスイネーブルメントに挑戦したい、営業のパフォーマンス改善につながる活動へアップデートしたいと考える営業マネージャーやイネーブラーには、まず何から取り組むべきか明確にするヒントとして、ぜひ本書を手に取ってほしい。