NGケース2:ヒアリングが浅く、本音を聞き出せない
次によくあるのが、「仮説提案をぶつけたあとのヒアリングが1往復で終わってしまう」パターンです。
仮説提案営業において、「仮説」はあくまでも「仮説」であり、間違っていることもあります。そのため、課題仮説を顧客へのヒアリングを通じて検証する必要があるのですが、その検証をあっさりと終えてしまう方が非常に多いのです。
次の例は、セキュリティベンダーの営業と某中小製造業IT担当者の間で交わされた、実際のやりとりです。
【NG例】
営業:御社は今、こういったセキュリティの課題感を抱えていらっしゃるのではないかと考えたのですが(仮説)、実際のところはいかがでしょうか。
顧客:はい、そうですね、そういった話はたまに出ていますね。
営業:なるほど、やはりそうでしたか。そうだとすれば弊社のこちらの製品がお役に立てるかと思いまして……。
この例では、「立てた仮説が合っている」ことがわかった瞬間、それ以上のヒアリングをやめてしまい、すぐに自社の製品紹介に進んでしまっています。これでは、その課題がどれだけ重要なのか、関与している部署はどこなのか、いつまでに解決したいのか、といった詳細がわかりません。その結果、提案内容がお客様にとって「刺さらない」ものになってしまいます。
次に、上記の会話を1往復で終わらせず、5回ほど「深掘りヒアリング」をした例を見てみましょう。
【Good例】
営業:御社は今、こういったセキュリティの課題感を抱えていらっしゃるのではないかと考えたのですが(仮説)、実際のところはいかがでしょうか。
顧客:はい、そうですね、そういった話はたまにでていますね。
営業:なるほど、「たまに」ということでしたが、いつごろからそういったお話がでるようになったのでしょうか。
顧客:去年の……そうですね、12月くらいだったかな…。
営業:その時期に、何かきっかけになるようなことがあったのでしょうか?
顧客:実は…ちょっとしたウイルス感染事故の騒ぎがありまして…。
営業:そうだったのですね。ちなみにその際はどういった対処をされましたか?
顧客:実は1部署内で起きたので、対象のPCをネットワークから外して、なんとかすぐ対処できたんですよね。
営業:そうでしたか。ただ、その部署から他部署に広がっていないことはどうやって確認されたのですか?
顧客:それは……とくに報告があがっていないから、まあ大丈夫だろうなと。
いかがでしょうか。このように、5回ほど「深掘りヒアリング」を繰り返していくと、お客様自身が気づいていない真の課題「確認する手段がないだけで、ウイルス感染が社内の各部署に広がっているかもしれない」という潜在リスクが見えてきました。
このヒアリング内容をもとに、現状のリスクと解決策について提案をすれば、お客様にとってかなり「刺さる」内容になります。
