「真の経営課題」を引き出し、停滞商談を前に進める
──今回の挑戦では、顧客を多角的に開拓していく「3Dアプローチ」がひとつの鍵となりますね。改めて、その目的と具体的な事例を教えていただけますか?
重松 「3Dアプローチ」はデジタルセールスが命名したアプローチですが、停滞している商談を動かし、受注率を向上させることを目的としています。停滞商談においては、フィールドセールスが会話している担当者が必ずしもキーパーソンとは限りません。エンタープライズ企業では、商談決定は平均6.8人へのアプローチが必要と言われているため、担当者の上司や他部署の人など、さまざまな接点を通じて、横断的・多角的にキーパーソンを発掘することが重要です。

縦のアプローチ:より役職が上位の意思決定者やキーパーソンへのアプローチ
横のアプローチ:異なる部署のキーパーソンへのアプローチ
過去へのアプローチ:過去の商談を再度ターゲットに発掘し、縦と横へ再アプローチ
具体的な事例としては、以前、課長レベルの方との商談がなかなか進まなかったケースがありました。そこで、より上位の役員にレターを送付してアポイントメントを取り付けました。役員の方とは、現場課題と経営課題の両方について話をうかがうことができ、商談を大きく前進させることができました。
このように、デジタルセールスが多くのコンタクト先を開拓することで、いわゆる「チャンピオン」(社内で商談を積極的に進めてくれる協力者)に出会えるチャンスが増えます。また、複数の人と会うことで、表面的な課題だけでなく、「真の経営課題」を引き出すきっかけにもなります。これが結果的に受注につながると考えています。

AI活用で目指す「質の良い商談」とマネジメント変革
──すでに成功事例も生まれていますが、「3Dアプローチ」は現在どのようなフェーズにあるのでしょうか。
重松 現在のフェーズでは、商談のきっかけをつくるだけでなく、それを「質の良い商談」に引き上げ、受注につなげることが重要になっています。そこで、AIを活用した「商談の品質チェック」をスタートしました。コールログをAIで商談解析し、商談で押さえるべき9つのルールを定義した「9 Rules of Quality(略して9RoQ)」に沿って、商談をチェックしています。
南 AIが「この部分のニーズヒアリングが浅いから、こういう改善をすれば確度が上がる」といった具体的な改善策まで提示してくれるため、メンバーはそれをセルフチェックに活かしています。これまではマネージャーがコールログを聞いてフィードバックしていましたが、マネージャーによってフィードバックの質が異なるという課題もありました。ツールを活用することで、マネージャーの負荷を軽減しつつ、客観的な視点を得て学ぶことができるようになったため、マネジメントの観点でも非常に役立っています。