多くの人が見落としている「ロープレ」の落とし穴
このような一連の流れを経て、初めて「型」をつくることができます。ただ、トークスクリプトを覚えても、いきなり商談の場でできるようにはなりません。第1回の記事でも紹介したように、「知る→わかる→やってみる→できる」という4つのステップを踏む必要があります。
ここで登場するのが、「ステップ3:やってみる」の「ロープレ」(表の緑の部分)です。

営業職であれば、ロープレを知らない人はほとんどいないでしょう。これを読んで、「ロープレならうちでもやってるよ」と思われた方もいるかもしれません。しかしこのロープレ、多くの人が見落としている“落とし穴”があります。
それは、ロープレをチェックする人によって見方が変わってしまうという点です。ある人は大雑把にチェックして、ある人は細かくチェックする。またある人はAのポイントを指摘して、またある人はBのポイントを指摘する。こうなると、指摘された当人は何を信じれば良いのかわからなくなってしまいます。
ですから、トークスクリプトや応酬話法を「型」としてガチッと決めたように、ロープレにおけるチェックポイントもしっかりと決めておくのです。そうすることで、評価基準の均一化が図れるようになります。
ロープレを行っているという企業でも、「では、スクリプトも用意してありますか?」と聞くと、8割くらいは「スクリプトはない」と返ってきます。しかし、決まったスクリプトなしに適切なロープレ評価はできませんから、スクリプトとロープレはセットで考える必要があります。
一例ですが、チェックポイントは流れに合わせて次のように定めます(保険営業の初回面談をモデルにしています)。
初回面談用ロープレチェック項目(保険営業版)
【オープニング】
- 第一印象(声・表情・姿勢・身だしなみ)は好印象か
- 名刺交換・挨拶がスムーズで自然か
- 面談の目的と所要時間を冒頭で共有しているか
- 自己開示(人柄や価値観が伝わるエピソード)が適切に行われているか
- 雰囲気づくりが硬すぎず、警戒心を和らげられているか
【現状ヒアリング】
- 現在の保険加入状況(種類・契約内容・保険会社)を正確に把握できたか
- 加入の経緯(きっかけ・判断理由)を聞けているか
- 家族構成・年齢・ライフステージ等の基本情報を確認しているか
- 将来のライフイベント(結婚・住宅・教育等)を把握できたか
- 聞き方が尋問調になっていないか
【ニーズ探索】
- 顧客の価値観(守りたいもの・大事にしていること)を引き出せたか
- 現在の保障への満足度や不安点を把握できたか
- 潜在的な課題について、質問を通じて顕在化できたか
- 保険の役割を簡潔に説明し、興味を引けているか
【次回面談】
- 次回の提案面談に対して顧客も前向きな姿勢を示しているか
- 次回日程・目的を明確に設定できているか
【全体の姿勢・マナー】
- 話のテンポや間は適切か
- 顧客の反応に合わせて質問や説明の深さを調整できているか
- 時間管理ができているか(予定時間を超過しすぎていない)
このようなチェック項目を「ロープレチェックシート」にまとめます。そのうえで、第2回の記事で解説したように、「学習→実践→振り返り」のサイクルを回しながら、型を定着させていくことが大切です。
上記のチェック項目はあくまで一例ですので、それぞれの業界や商材に合わせたチェックポイントを明確に決めておきましょう。
「型の運用・定着」の責任者を明確にしよう
「型」としてつくったトークスクリプトや応酬話法の定着を、誰が責任を持って行うかを明確にしておくことも大切です。
営業所や支店任せにすると、やるところとやらないところが出てきてしまうため、「いつ・誰が・どのように型を定着させるか」を明確にしておくのです。
そのうえで、キーエンスやプルデンシャルのように、ロープレ大会や試験といった施策を設け、合格しないと営業デビューできないといったルールまで設定すると、組織として「型」が磨かれ、定着していきます。
「型」を一度身につけても、人間はすぐに忘れてしまうものです。組織としては、定期的な試験やチェックの時間を設けるなどして、常に「型」が組織に定着するように気を配るべきです。まさにBack to the Basics(原点回帰)の精神が重要なのです。