ハイパフォーマーでさえ、売れている理由を言語化できない?
インタビューをやってみるとわかると思いますが、ハイパフォーマーである彼らでさえ、「自分がなぜ高い成果を上げられているか」について、体系立てて説明できる人はほとんどいません。なぜなら、彼らのノウハウは多くの場合、言語化されないまま「感覚」として身についているからです。
実は、過去の私自身もそうでした。
営業5年め、プルデンシャルでそれなりの成果をあげられるようになっていた私に、初めてセミナーの講師の依頼がありました。当時は成果も出していましたし、営業なら誰にも負けないという自負もありました。「営業について教えてほしい」という依頼をもらったことが誇らしく、二つ返事で引き受けました。
しかし、講師として何を話そうかと準備していた時、私は愕然としてしまったのです。それまで、自分が営業としてやってきたことや、成果をあげられている理由を明確に言語化する習慣がなかったからです。
講師として人に教える立場になって、「一体、何をどうやって話せば良いのだろう」と、途方に暮れてしまいました。今でこそ本を書いたり、こうして記事を書いたりできるようになりましたが、当時の私はまさに、感覚で突き進んでいたわけです。
とはいえ、引き受けたからにはやり切らなければいけない。そこから必死で自分の経験を棚卸しし、言語化する作業に取り組みました。そうして、なんとかセミナーをやり遂げることができ、その後「田中大貴営業セミナー」という小さな営業塾が度々開催されるようになりました。
このように、営業職に就いているほとんどの人が、言語化する習慣を持っていません。組織における「型づくり」は、まずはこの暗黙知を形式知に置き換えることから始まるのです。
「自社特有の型」は、5段階のプロセスでつくられる
弊社では、組織ごとの営業の型づくりを支援する「仕組み化コンサルティング」というサービスを次のプロセスで行っていますが、どの組織においてもこのプロセスが使えます。
「自社特有の型」づくりのプロセス
(1)ハイパフォーマー複数人へのインタビュー
(2)トークスクリプト作成
(3)応酬話法作成
(4)ロープレチェックシート作成
(5)つくった型をロープレで定着させる
ひとつめのインタビューは「複数人」というのもポイントです。ハイパフォーマーが複数人いれば、成果につながるやり方や考え方も複数あります。数が少ないと、どうしても考え方や方法に偏りが生まれ、組織内で誰もが使える汎用性のある「型」をつくりにくくなります。
複数人へのインタビューから、普遍的だと思われる「売れる要素」をピックアップし、それをトークスクリプトや応酬話法としてまとめていきます。
ここまで、なるべく単純化して解説をしていますが、実際の型づくりは、「何を型化するのか?」といった問いからスタートします。
トークスクリプトひとつとっても、信頼構築から最終合意のプロセスまですべてのスクリプトをつくるのか、とくに課題を抱えているプロセスのみつくるのか、組織において考え方はそれぞれです。
商材が複数ある場合も、すべての商材でつくるのか、とくに注力したい商材をピックアップしてつくるのかなど、さまざまな考え方があるでしょう。
自社特有の型づくりは、「何を型化すべきか」を整理整頓したうえで、取り掛かるのがベストです。