「営業標準化」と「商材量」の課題をSFAで乗り越える
徳田 どのような課題や状況をきっかけに、営業改革やデータ活用が進んだのか、歴史をうかがえればと思います。
行平 「標準化」と「商材の多さ」というふたつの課題がありました。まず、グループには営業社員が5,000名ほどおり、営業力のばらつきに課題がありました。また、ふくおかフィナンシャルグループはグループ会社も20社ほどあり、その豊富なソリューションからお客さまへ提案する営業現場の難易度が上がっています。このふたつをSFAで解決できないかというのが営業改革におけるスタートとなります。
徳田 ソリューションが豊富であり、それらを理解して売ることが必要だけれど、営業担当者がすべてを覚えたり、対応したりすることは現実的ではない。そのための情報インフラ・コミュニケーション基盤としてSFAが機能しているかたちですね。
行平 おっしゃるとおりです。グループ会社や外部パートナーと協業したソリューション対応は複雑かつ難易度の高い業務フローから、営業担当者がニーズをキャッチしてからお客さまへの提案までに多大な時間を要していました。一部のソリューションは、グループ内の情報共有・コミュニケーション・業務フローがSFAに集約し、成約件数や収益が50%ほどアップしています。

株式会社ふくおかフィナンシャルグループ 福岡銀行 DX推進本部 部長代理
/ デジタルコーポレートグループ 行平享史さん
顧客のニーズをポータルサイトから収集 NBAの成果と検証
徳田 大きな変化ですね。「Next Best Acction(NBA)」は、どのような機能なのか、もう詳しくうかがってもいいですか。
行平 まずは我々の企画チームで、「この顧客にはこのようなアクションが有効なのではないのか」という仮説を立てます。それをもとにデータソリューション部が傾向分析やセグメント別の顧客分析を行い、検証をしながらターゲティング精度を上げていきます。そして企画チームが営業現場で活用できる状態に最終調整を行ったうえでリリースし、現場の評価をもとに改善を実施します。現在法人向けで30、個人向けには20ほどのシナリオが完成しています。

行平 傾向分析は、SFAに蓄積されたデータがあってこそできるものです。創立年、株主、扱う商材など、企業の公開情報だけでなく、代表者の意向やニーズ・案件関連など行員が足で稼いだ情報の組織的な蓄積も進んでいます。とくにNBAを通じたニーズや案件へのアプローチ結果という今後の差別化ポイントとなる情報は、年1万件以上のペースで蓄積しています。
さらに大きいのは法人向けのポータルサイト「BIZSHIP」の提供が始まったことですね。このポータルを通じて、お客さまの興味関心やニーズをこれまでにない切り口やスピードで取得できるようになりました。
徳田 顧客側のデータやニーズを、企業データと統合したことで、NBAの提供が実現できているんですね。営業スキルの底上げという意味では、そこにハイパフォーマーの行動分析も掛け合わせているのでしょうか。
行平 まさに。ハイパフォーマーの行動を可視化し、同じ営業プロセスにおいて、自分とハイパフォーマーの差分がどこか、どう埋めるべきかを考えられるようなNBAのシナリオを段階的にリリースしています。

徳田 NBAのようなサジェストの機能は、本当に活用できるシナリオなのかどうか、その後の検証が肝になると思うのですが、どのように検証をされていますか。
行平 営業関連の検証はどうしても収益貢献のみのシンプルな判断になりやすいのですが、シナリオの精度を上げるべく、工夫をしています。まずは営業現場にバイアスがかからないように良い評価でも、悪い評価でもフラットに評価します。そのうえで、役に立ったかどうかコメントから傾向分析を行い、どの部分を改善すると評価が上がるか週次で分析・改善しています。
結果として、いまはシナリオ全体の「有効評価率(活用され、評価の対象となっているもの)」が当初40%から75%へと向上し、現場の評価が高いシナリオに集約されてきました。
徳田 短期的な売上成果で見るのではなく、長期的な視点でシナリオを改善していくのですね。これは、セールスイネーブルメントに取り組むうえで非常に重要なスタンスだと思いました。