リモート営業とは?
リモート営業とは、電話やメール、オンライン商談ツールなどを活用して、顧客に対してリモート(遠隔)で営業活動を行う方法です。
以前は「営業は足で稼ぐ」という考えが根付いており、実際に顧客のもとへ訪問して対面でヒアリングや商談などを行っていました。
しかし、デジタル技術の進化によって遠隔でも営業活動ができるようになり、自社オフィスや自宅などでリモート営業を行う企業が増えているのです。
リモート営業が広まった背景
リモート営業が広まった背景には、主に以下3つの要因があります。
・人手不足と働き方の多様化
・デジタル技術の発展とオンラインツールの普及
・近年注目の「インサイドセールス」との親和性が高い
それぞれ具体的に見ていきましょう。
人手不足と働き方の多様化
現代の日本における深刻な課題とされる「少子高齢化」。その影響は全年代に広がっており、働き手である労働人口も減少の一途をたどっているため、人手不足に悩まされている企業は少なくありません。
少ない人員で生産性を最大化するためには、従来の営業手法では非効率になりました。そこで、移動時間をなくして効率的に営業活動を進められるリモート営業が注目されました。リモート営業であれば、今までは対応が難しかった遠方や海外の顧客にもアプローチできるため、販路を広げることも可能です。
また、多様な働き方が求められている現代では、リモートワークを希望する人も増えています。リモート営業を取り入れれば、育児や介護、病気などの事情でオフィスへの出社が難しい優秀な人材の雇用にも役立ち、人手不足解消につながるでしょう。
デジタル技術の発展とオンラインツールの普及
デジタル技術が進歩したことで、WebサイトやSNSなどのタッチポイントが多様化したり、複雑な分析ができるようになったりするなど、営業活動にデジタル技術を活用できる機会が増えています。
また、SalesとTechnologyをかけ合わせた造語「セールステック」という、営業活動に特化したITシステムやクラウドサービスなどのツールも盛んに開発されています。
このような背景から、オンラインツールの活用により難なくリモート営業ができる環境が整っているのです。
顧客の購買行動がオンライン化している
顧客の購買行動がオンラインへと移行したことも、要因の一つと言えるでしょう。
かつての購買行動では、テレビCMや新聞広告などで商材を認知した顧客は、営業担当者や店舗などで直接詳しい話を聞かなければ、詳しい情報を入手できませんでした。
しかし現代では、公式サイトやレビューサイト、SNS、YouTube動画などさまざまなチャネルから多様な情報を得られます。また、ECサイトでの購入や電子契約などができるようになり、情報収集だけでなく購入・契約もオンラインで済ませることが可能です。
このように、現代の顧客はオンラインの購買行動を好むようになっています。そのため、従来の営業手法とは異なるアプローチが必要となり、オンライン化した顧客の購買行動と相性の良いリモート営業が注目されているのです。
近年注目の「インサイドセールス」との親和性が高い
リモート営業が近年注目されている「インサイドセールス」と非常に親和性が高いことも、世間に浸透した要因となっています。
インサイドセールスとは、非対面でリードナーチャリング(見込み顧客の育成)や商談、クロージングなどの営業活動を行う手法です。アプローチするためには電話やメール、オンライン商談ツール、チャットなどのツールの活用が不可欠であるため、インサイドセールスを導入する企業はリモート営業への移行が必須と言えます。
リモート営業のメリット
リモート営業を導入することで、さまざまなメリットが期待できます。
移動にかかる時間やコスト削減
リモート営業を行うことで、移動にかかる時間やコストが不要になる点もメリットです。
従来の営業活動ではオフィスの出社や顧客への訪問は欠かせなかったので、移動にかかる時間やコストは膨大でした。
しかしリモート営業の場合は、オンラインで顧客と商談を行うため訪問する必要がないうえに、ツール上で進捗状況を共有したり日報を提出したりするため、オフィスへ戻る必要もありません。今まで移動に充てていた時間を顧客へアプローチする時間として使ったり、浮いた分のコストを新しい事業に投入したりするなど、時間とコストをより有効に活用できるでしょう。
営業対象のエリアの拡大
リモート営業は顧客の元へ訪問しないため、営業対象となるエリアに制限がありません。
今までは、電車や自動車などで行ける範囲でなければ訪問が難しく、営業対象のエリアを広げるためには膨大な出張費がかかっていました。
しかし、顧客との接点をすべてデジタルへ移行することで、どのような場所の顧客とも簡単にコミュニケーションを取ることができます。国内のみならず海外にも営業対象を拡大できるため、自社の売上にも大きな影響が期待できるでしょう。
人手不足の解消
企業規模や業種に関わらず、人手不足が大きな課題となっている企業は多く見受けられます。営業部門は売上をつくるために企業にとっては欠かせない部門ですが、人手不足では満足な売上を見込めないでしょう。
リモート営業なら、移動時間を削減して対象エリアを広げられるため、限られた人員でも成果を出すことが可能です。
リモート営業の課題・デメリット
リモート営業は数々のメリットがある一方で、事前に対策を考えておくべき課題やデメリットも存在します。
情報共有が難しく社内コミュニケーション不足に
フルリモートで営業活動を行うようになると、チーム内の情報共有がしにくくなるのがデメリットです。
全員がオフィスに出社していると、お互いに声をかけ合ったり、朝礼やミーティングなどで進捗状況を把握したりできます。しかしリモート営業の場合は、顧客だけでなく社内メンバーとも顔を合わせる機会が減るため、コミュニケーションが不足しお互いの状況を把握するのが困難になります。
ビジネスチャットツールやSFAなどのツールを活用し、離れていてもコミュニケーションを取れるよう工夫しましょう。
顧客との関係構築が困難
対面せずに営業活動を進めるため、関係性構築に時間がかかりやすい点も課題です。
オンラインでのコミュニケーションが普及してきているとは言え、いまだに対面でのやり取りを好む人も少なくありません。また、対面だとその場の雰囲気や相手の顔色など、テキストや音声だけでは把握しきれない情報も得られます。
電話やメールだけでなく、オンライン商談ツールも活用して相手の顔を見ながら話せる場を作りましょう。
通信環境の影響が大きい
オンラインでの商談や会議では、通信環境によって進行が妨げられる場合も。通信環境が悪いと、画面やフリーズしたり音声が途切れたりするため円滑に進行できません。また、途中で中断してしまうことがあると、顧客の購買意欲の低下にもつながります。
オンライン会議や商談の前には必ず通信環境を確認するのはもとより、相手にも通信環境を整えておくよう依頼しておきましょう。
営業活動をフルリモートで進める手順
ここでは、どのようにリモートで営業活動を進めたら良いのか、具体的に解説します。
リードジェネレーション
まずはリードジェネレーション(見込み顧客の獲得)を行います。リモート営業の場合、リードジェネレーションでは以下のような施策が可能です。
- 営業リストを基にした電話、メール
- ウェビナー(Webセミナー)の開催
- Webサイトの問い合わせフォームやホワイトペーパー
- メルマガ配信
- SNSによる情報発信
このようなデジタルチャネルを活用し、リードとの接点を創出します。
リードナーチャリング
次は、リードの購買意欲を高めて見込み度を向上させていく、リードナーチャリング(見込み顧客の育成)です。
電話やメールで定期的にコミュニケーションを取ったり、アンケートやヒアリングなどを通じてリードの課題を聞き出したりします。また、リードのニーズに合った資料やキャンペーンを提供し、リードの見込み度を高めていきます。
リードの反応やアクションなどに応じて「ホワイトペーパーをダウンロードしたら5点」「~~~という課題があれば10点」など、見込み度を数値化して管理する「スコアリング」を行いましょう。高得点になったら見込み度が十分に高まったと判断し、商談のアポイントを打診します。
商談
リモート営業では、商談もオンラインツールを活用してリモートで行います。オンライン商談ツールを活用することで、対面での商談と同程度の品質の商談を実施できます。オンライン商談ツールは、お互いの顔をカメラで映しながら会話ができるため、表情や反応を確認しやすくなります。また、資料共有や画面共有、ホワイトボード、チャットなどの機能を活用することで、より深くコミュニケーションを取れるでしょう。
クロージング、受注
商談がまとまった後のクロージングや受注なども、リモートで行うことが可能です。とはいえ、メールで契約書のPDFを送付し、顧客に押印してもらって返信してもらうのは、セキュリティ面が気になるという人もいるでしょう。そこで、電子契約ツールの活用をおすすめします。
電子契約ツールはクラウド上で契約を締結することに特化しているため、セキュリティ面のリスクが少なく、運用も手軽なのでスピーディに契約を締結できます。
アフターフォロー
受注して終わりではなく、継続的にフォローして長期的な関係性を構築することが重要です。顧客と良質な関係性を構築できれば、リピート購入やアップセル・クロスセルを促せます。また、サブスクリプションサービスの場合は、解約を防止することもできるでしょう。
電話やメール、オンライン商談ツールなどを用いて、顧客の現状や困りごとなどをヒアリングして最適なフォローをしましょう。また、顧客のサービス利用状況や商品購入履歴などを分析し、適切なタイミングで有益な情報を提供することも効果的です。
リモート営業を成功に導くコツ
リモート営業は「顧客と対面しない」「多様なツールを活用する」などの特性があるため、従来の営業活動とは異なるポイントに気を付けなければなりません。
そこで、リモートでの営業活動を成功させるコツを紹介していきます。
なお、こちらの記事では、インサイドセールスを成功させるコツを「戦略設計」「実践」「運用」の3つのポイントに分けて解説しています。フルリモート営業にも応用できる内容のため、ぜひ参考にしてみてください。
非対面でも信頼関係を構築できるスキルを身につける
リモート営業と、従来の営業活動の大きな違いは「対面か、非対面か」という点です。
従来は対面のため、相手の顔色や反応、その場の雰囲気などで、温度感を探ることができました。しかし非対面の場合、どの程度の温度感なのか把握することが難しく、コミュニケーションが取りにくいという課題があります。
そのため、非対面でも相手と適切な距離感で関係性を構築できるスキルが求められます。場数をこなすことで徐々に身につくものですが、研修やセミナーを受講したり、上司を相手にしたロールプレイングを行ったりすることも有効です。
こちらの記事では、デジタル技術を活用するインサイドセールスに必要なスキルを紹介しているので、併せてご確認ください。
適切なデジタルツールを導入する
フルリモートでの営業活動では、デジタルツールの活用が必須です。自社の業務内容や運用体制などに合わせたツールを選定しましょう。
フルリモート営業で活用できるツールの一例を紹介します。
MAツール
MAツールは、マーケティング活動を自動化・効率化するためのツールです。たとえば、以下のような機能が搭載されています。
- お問い合わせフォーム作成
- メルマガ配信、個別メール配信
- LP作成
- アクセス解析
- スコアリング
主に、リードジェネレーションやリードナーチャリングに活用できるツールです。
SFA/CRM
SFA/CRMは、顧客に関するあらゆる情報を一元管理できるツールです。
- いつ、誰が、誰に、どのようなアプローチをしたか
- 相手の反応はどうだったか
- 受注につながったか
- 受注後にフォローできているか
- アップセルやクロスセルの提案をしたか
このようなデータを一元管理することで、対応の抜け・遅れを防ぎ、適切なタイミングでのアプローチが可能になります。
CTI
電話でのコミュニケーションがメインなら、CTIは欠かせません。CTIはパソコンやスマートフォンで電話の受発信ができるツールのため、固定電話がなくても電話営業ができます。ツールによっては、別の担当者への転送機能や、音声ガイダンスによる案内機能なども充実しています。
メール配信ツール
メールでのコミュニケーションが多ければ、メール配信ツールを活用しましょう。一斉配信だけでなく、個別のメール配信や、ターゲットを分類したセグメントメール、シナリオ通りに自動でメールが送られるステップメールなども可能です。
オンライン商談ツール
商談を実施する際には、オンライン商談ツールの活用がおすすめです。相手の顔を見ながら商談を進められるうえに、画面や資料の共有機能、ホワイトボード機能などがあるため、対面での商談と同じように商談を展開できます。
チーム内で共通認識を持つ フルリモートで営業を進めていくにあたり、自分一人ではなく、チーム内で協力し合い進めていくことが重要です。チーム内で共通認識を持つことで、意識が統率されて成功へと進んでいけるでしょう。
調剤薬局向け事業を展開する株式会社カケハシは、チーム内で目的や営業プロセスの認識を共通させたうえで、そこに向かうためにはどのような戦略を取るべきか共有することで、フルリモートでも成果を出しやすい組織作りを実現しています。詳しくはこちらの記事で紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
リモート営業の将来性
これからリモート営業を取り入れようと考えている人は将来性が気になるかと思いますが、結論から言うと、リモート営業は将来性のある分野です。その理由として、以下のような要因が挙げられます。
- AIやスマートデバイスなど、デジタル技術のさらなる発展が見込まれている
- 少子高齢化の影響による労働力不足のため、フルリモートワークなど柔軟な働き方で多様な人材の活用が求められている
- 顧客の購買行動は常に変化しているため、顧客データを分析してニーズやトレンドを読み取る必要がある
このような背景から、リモート営業は今後ますますの発展が期待されています。
まとめ
リモート営業は、これからの時代のスタンダードになっていく可能性のある営業手法です。デジタル技術の発展や人手不足、多様な働き方のニーズが無視できない現代では、今後もリモート営業の必要性は高まっていくでしょう。
ただし、リモートで営業活動をする場合、顧客との関係性構築やツール活用などに課題が生じやすいとも言えます。本記事の内容を参考に、リモート営業の仕組みを整備してみてください。