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SalesZine Day 2025 Summer

2025年7月24日(木)13:00~18:20

高橋浩一さんがゆく! 大企業のセールスイネーブルメントの工夫

JTB法人営業の変革 コロナ禍を越え、「デジタル化」と「体験型」で進化する人材育成

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 コロナ禍を経て、旅行業界のビジネスモデルは大きく変化しました。とくに法人領域では、企業が旅行会社に求める価値観が多様化し、提供されるサービスも進化しています。これにより、提供側には新たな営業ノウハウが求められ、営業担当者の育成が喫緊の課題となっています。こうした状況下で、業界最大手のJTBは2024年よりデジタルツールを活用したセールスイネーブルメント活動を開始。本稿では、新たな時代に向けたJTBのBtoB営業人材育成の取り組みについて、TORiX 代表取締役の高橋浩一さんが、JTBで法人ビジネスを担当するビジネスソリューション事業本部・渡辺紳さんにうかがいます。

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法人ビジネスも厳しい状況となったコロナ禍、求められた営業変革

高橋(TORiX) JTBといえば一般的に個人向けの旅行のイメージが強いのですが、BtoBのビジネスにも力を入れられていると聞きまして、今日はそのあたりのお話をうかがえればと、お声がけさせていただきました。まず、旅行会社の法人向けビジネスというと社員旅行や報奨旅行というイメージを抱きますが、コロナによって大きく行動制限がかかった中で、当時相当なダメージがあったのではないでしょうか。

渡辺(JTB) そうですね。コロナ前までの時期、とくに2019年は国内・海外ともに需要が旺盛で、ラグビーのワールドカップ開催や翌年の東京オリンピックを目前に、当社にも大規模な法人需要が押し寄せていました。

 ところが2020年の2月ごろから嘘のようにキャンセルが続き、毎年実施されていたイベントも含めて軒並み案件がなくなってしまったのです。当初は「夏ごろには収まるだろう」と構えていたのですが、なかなか世の中は動かず……。当社でも社員の出社停止も含めすべての営業活動を止めざるを得ず、そこから約2年間は厳しい状況となりました。

株式会社JTB 執行役員 ビジネスソリューション事業本部 事業推進部長 渡辺紳さん

高橋(TORiX) まさに直近5年ほどは、あらゆる業界が変化を迫られた時期だったと推察します。JTBの法人ビジネスでは企業のエンゲージメントの総合的な向上支援をミッションとし、人が集まる場所や人の交流という部分に焦点を当てて、ビジネスそのものを変えようとしていますが、ビジネスソリューション事業本部ではコロナ禍以降どのように変革を進めていかれたのでしょうか。

渡辺(JTB) 人が動く活動に関する需要が消失してしまったなかで、まずはコロナ対策事業という行政のBPO事業に活路を見出しました。具体的にはワクチン接種です。会場を押さえて人を動かすという我々の知見を活かし、事前の案内状の発送から当日の接種会場での運営、つまり出迎えから、安全にお帰りいただくまでのフローをひとつのかたちにし、事業として行政の課題解決に寄り添っていったところが大きな転換点だったと思っています。そこが、我々が危機を脱することができたひとつのカンフル剤になったのは間違いありません。

多様な人材のスキル向上に向け、セールスイネーブルメントを開始

高橋(TORiX) ワクチン接種が円滑に進んだことが世の中に安心感をもたらしましたが、そこにはJTBの力があったのですね。一方で今後その部分をビジネスとして成長させていくためには、行政から案件を請け負うだけでなく、民間企業にも提案していくかたちになると思いますが、そうなると商材やサービス、提案の切り口が大きく変わりますよね。そこはどのように対応されたのでしょうか。

TORiX株式会社 代表取締役 高橋浩一さん
東京大学経済学部卒業。外資系戦略コンサルティング会社を経て25歳で起業、企業研修のアルー株式会社に創業参画(取締役副社長)。事業と組織を統括する立場として、創業から6年で70名までの成長を牽引。同社の上場に向けた事業基盤と組織体制を作る。2011年にTORiX株式会社を設立し、代表取締役に就任。これまで4万人以上の営業強化支援に携わる。コンペ8年間無敗の経験を基に、2019年『無敗営業』、2020年に続編となる『無敗営業 チーム戦略』(ともに日経BP)を出版 、シリーズ累計10万部突破。2021年『なぜか声がかかる人の習慣』(日本経済新聞出版)、『気持ちよく人を動かす』(クロスメディア・パブリッシング)、2022年『質問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか? 』(KADOKAWA)、2023年『「口ベタ」でもなぜか伝わる 東大の話し方』(ダイヤモンド社)を出版。2万人調査の分析に基づき、2024年4月に発売された新刊『営業の科学』(かんき出版)は、6万部を超える反響を得ている。2024年4月から東京学芸大学の客員准教授も務め、「”教育”と”営業”の交差点」を探究している。また、東京都内で「人生のヒントが見つかる」をコンセプトにしたリアル書店も経営

渡辺(JTB) まさに売り方の変革を進めていくこととなります。一方それ以前にコロナ禍で、当社では人材流出が課題となりました。仕方のない側面もあると思いますが、一部の若手が旅行業界の未来に不安を感じて去ってしまったのです。

 そこで、それまで法人領域ではほとんど中途採用はしていなかったのですが、経験の有無を問わずに人材を確保していきました。そして、多様なバックグラウンドを持つ営業担当者のスキル向上・均一化を目指すための「人財育成フレームワーク」が必要と考えて、セールスイネーブルメントに取り組むことを決めたのです。

高橋(TORiX) メンバーの構成・スキルの状態もだいぶ変わったわけですね。とはいえ、既存のメンバーも多くいる中で新たな施策に現場がついてこられるかが重要になると思います。セールスイネーブルメントの意義をいかに伝え、改革を進められたのですか。

渡辺(JTB) 昔からあった当社の課題として、良い企画書や提案はたくさんあるものの、拠点ごとに情報が分散されてしまっているというものがありました。その結果、担当者が遅い時間まで自身の知見でたくさんの企画書をつくるなど、大きな負担がかかっていました。

 中途採用者が増えたことによってあらためてその課題が浮き彫りとなり、各人が作成した企画書やお客様が持つ課題、それに対するアウトプットなどの情報を全支店・全社員で共有する仕組みが早急に必要だと考えました。そこでナレッジワークという営業支援ツールを導入し、各拠点が持つ優れた企画書や教育素材などを誰でも見られるようにし、業務を効率化するためのDX活動を開始しました

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デジタルツールを浸透させたふたつの工夫

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この記事の著者

SalesZine編集部 宮田華江(セールスジンヘンシュウブ ミヤタハナエ)

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※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

石田仁志(イシダヒトシ)

IT系フリーライター、記者。IT系の業界紙で記者として15年活動、編集部門のトップを経てフリーに。エンタープライズ系からTech系、組込み系まで幅広い領域を取材。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://saleszine.jp/article/detail/7298 2025/07/10 07:00

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