顧客データ統合ツール「uSonar」が有する5つの特徴
セッションの冒頭では、ランドスケイプが提供する顧客データ統合ツール「uSonar」が紹介された。同社で執行役員を務める戸叶氏は「LBC:Linkage Business Code」と呼ばれる同製品を解説するにあたり、5つの特徴が挙げた。
- 「データの数」
全国の拠点ベースで820万件のデータを保有し、企業数という視点では約560万社ものデータ群を保有しているランドスケイプ。このようなマスターデータを、各社で保有する顧客データの名寄せやデータのクレンジング・新規のターゲティング・などに活用することができる点が強み。
- 「資本関係で構成されたデータ」
本社と拠点、あるいは資本関係における親子とグループ、といった概念を有するコードを保有している。これらのコードを各種データに付与することで、拠点単位、企業単位、グループ単位での名寄せを実現する。
- 「蓄積されたナレッジデータ」
30年以上にわたり、旧社名や合併前情報、移転前情報、略式名称等の情報を蓄積・保有するランドスケイプ。これにより、ユーザー企業が保有する情報が古かったり、表記揺れが見受けられたりしても、正確な社名を含む各種情報への自動アップデートを実現。
- 「メンテナンスの頻度と速度」
同サービスでは年間で2,000万件を超えるメンテナンスが実施され、データの反映も各種公開ソースを元に情報収集がされているが、情報が入り次第、随時アップデートするシステムを独自で構築している。
- 「CRM・SFA、MAとの連携」
連携するCRM/SFAツール内の顧客データをリアルタイムにメンテナンスするほか、重複登録を防ぐ基本情報の自動入力支援機能が搭載されている。
これらの特徴を有する「uSonar」では、CRM/SFAをはじめとした各データの格納先と連携して活用できる点が強みだ。収集されたデータに管理コードを付与することで、仮想統合データベースを構築し、1社ごとの横串の情報集約を実現する。なお、ここで付与される情報は正式な企業名や業績、従業員数、売上など計86項目にも及ぶのだという。
データベース活用にあたって意識するポイントとして「確度の高い見込み客を見つける」「同じ傾向の見込み客を洗い出す」「セグメントごとにアプローチを最適化する」の3点を挙げた。
また、収集されたデータの活用例について、「企業属性の情報がSales Cloud(Salesforce)をはじめとしたCRM/SFAの企業情報に紐づけられることによって、自社の既存顧客やアプローチ先の見込み客の姿をデータに基づいて紐解いていくことができるようになる」と利点を語った。
そのほかにも、デジタル情報を組み合わせることで、「たとえば、自社のウェブサイトを見に来たことがある会社が、今はどの企業のどのようなページを見ているか」という情報も把握することができる点も効果的な活用例のひとつとして紹介された。ウェブでの外部の検索動向をキーワードで特定して可視化することもできるため、タイミングとニーズを把握したセグメント条件として抽出することも可能になるという。
戸叶氏は、ターゲティング以外の観点でも、営業のバッティングや提案漏れを防ぐことにも活用できると続ける。
「ミキサー」機能を活用することで、企業の特性だけでなくウェブの動向やニュース情報なども集約して一覧することができるため、新たなアプローチ先を見つけるうえでも有効であると解説された。
営業・マーケ間の連携に苦戦したセゾン情報システムズが語る実践事例
セッションの後半では、入社以来、8年ほど見込み客の獲得業務に従事しているセゾン情報システムズ マーケティング部の高山真彰氏を招き、セゾン情報システムズでの法人データ活用事例が紹介された。
同社では、ファイル転送の「HULFT」を中心としたIoTやRPA、DX時代のニーズに合わせたさまざまなデータマネジメントソリューションのほか、データ連携基盤のリンケージ、流通ITサービス、フィナンシャルITサービスを提供している。
そんなセゾン情報システムズが抱えていた課題は「MAを導入したものの、うまく運用することができなかったこと」。2014年10月ごろにMAの導入を検討したセゾン情報システムズだが、導入当初はExcelでの連携が基本であったため、まずはマーケティングデータベースとユーザーのデータベースをマッチングさせることで見込み客のリストを作成。その後、作成されたリストをメール配信ツールに格納したのち、別のExcelを用いてさらなるマッチングを行う必要があった。
「ステップを踏み、毎年学びながらツール活用を進めてきた」同社。実際に、2016年にSalesforceとの連携を開始し、2017年にはBIによるデータ分析までが可能になった。しかし、この段階でも管理そのものにはExcelが使われていた。加えて、部署間の体制にも課題があった点も言及された。
「当初はマーケティング部と営業の連携に苦戦していました。たとえばイベントで多くの見込み客との接点を持つことができても、それらが営業の成果につながっているのか把握しきれていない状況でした」(高山氏)
このほかにも、見込み客として接点を持った時の企業名と実際に受注した際の企業名が一致せず、「お客様の名前」と「企業名」が結びついていなかったり、マーケティング部が保有するリードに企業情報が付与されておらず、ターゲティングができない状況もあったりしたという。
「マーケティング用のデータベースの加工・抽出をExcelで行わなければならず、出力されたリード情報に対して、手動で結合する作業時間、工数も課題となっていました」(高山氏)
そんなセゾン情報システムズでは、現在「Oracle Eloqua」とともにランドスケイプの「uSonar」を導入している。
両製品を連携させることで、見込み客に対する企業情報付与の自動化を実現できる点に注目し、ウェブサイトのフォームに「uSonar」の活用を決めた。たとえば、社名の単語を一部入力するだけで社名候補がサジェストされるなど、情報入力の工数削減を実現。また、社名を登録すると同時に、「uSonar」が企業の従業員数や年商といった情報をデータベースに格納し、情報を補完する点も導入により得られた利点として語られた。
このように、社名の登録と同時に、多様な企業情報が自動的に付与されるようになり、社名に基づいてデータを統一することが容易になったという。また、データベースの加工・抽出においては、セゾン情報システムズの「DataSpider」と「uSonar」を連携することで作業時間の大幅短縮を実現。Excelを用いた手動入力で3時間を要していた3,000件の名寄せ・加工やSFAへの格納が、ふたつのサービスの連携により一切不要になったのだという。「オンラインでもオフラインでも活用できることは大きなメリットです」と、高山氏は振り返った。
部門間の連携を阻むのは「活動のミスマッチ」
「受注数を最大化できる」という点で営業とマーケティングは連携の重要性が語られるが、そうしたメリットがあるのにもかかわらず、セゾン情報システムズが語った「営業・マーケティング部門間の連携に苦戦した」エピソードのように、双方が連携不足になってしまうケースも少なくない。その原因には「営業とマーケティングそれぞれの活動がマッチしていない」点が指摘された。
たとえば、ハイタッチ営業においては提案先である「顧客」が固定されるが、提案する「商材」はその時々で変化する。一方で、マーケティングは「面」で訴求するため、提案する「顧客」が変化する一方で、訴求する「商材」は固定される。これがセールス・マーケティングの連携を妨げる要因になっている、と高山氏は説明した。
こうした要因を踏まえて、セゾン情報システムズはターゲット先の企業・業種を一致させる方針を打ち出すほか、「新製品」「既存の製品」「既存のお客様」「新規のお客様」の4象限に分けたマッチングを実施しているという。エリアを参照しながら、顧客ごとにマッチングを実施し、企業情報に基づいて連携に着手することで「マーケティング部門が獲得した見込み客をそのまま営業に渡しても、対応してもらえない」という課題を解決できたという。
その後、「メールマガジンを配信するものの、開封率が奮わない」課題に対する対策に関しても言及された。高山氏は「反応がよいお客様の存在を見逃さず、すぐに営業と連携できるような体制で取り組んでいます」と語り、商談ごとにセグメントを狭めていき、少量のグループでメール配信をすることによって開封率を高めているという。
高山氏は、ニューノーマル時代に営業力強化を実現するうえで目を向けるべき3つのポイントとして「CRM・SFA・MAを活用して成果につなげるうえで、『法人データベース』の活用が必要不可欠になってきていること」「営業・マーケティング双方の連携においても、企業属性情報が必須であること」「何から手をつけたらよいかわからない人は、まずは社内にどのようなデータがあるのかを確認し、課題解決の糸口となるデータを見つけること」を挙げ、登壇セッションを総括した。