営業の仕組みを整えたのに、なぜ思うような成果が出ないのか?
多くの企業は日々、営業の成果を上げるためにさまざまな施策に取り組んでいます。営業トークや提案資料の統一やマニュアル化、SFA/CRMの導入はよく採用される取り組みで、実践している企業の皆さんも多いのではないでしょうか? しかし、これらは営業活動の効率を上げるものの、必ずしも成果に直結するとは限りません。
たとえば、提案資料を丁寧に作り込み、プレゼンもうまくいったはずなのに、商談後に「検討してまた連絡します」と言われたまま、音沙汰がない──。あと一歩で契約、という手応えを感じていたにもかかわらず、いつの間にかフェードアウトしてしまう。こんなシーンを経験したことはありませんか?

実際、営業活動の効率化が必ずしも収益性の向上に寄与しないことは調査によっても明らかにされています。日本オラクルによるとSFA/CRMを導入した企業のうち「収益性が向上した」と回答したのは全体のわずか25%にとどまりました(※1)。
※1 国内企業調査レポート「営業DXの実態」 Vol. 3:経営部門の皆様、SFA/CRMによって期待する成果が出ていますか
では、なぜ仕組み化しても期待する成果が出ないのでしょうか? その答えは、「顧客視点の欠如」にあります。
どれほど営業の仕組みを整えても、それが顧客の実態とズレていれば、商談は前に進みません。成果を出すためには、顧客にとって価値のある提案になっているか、営業プロセスが顧客の意思決定フローと噛み合っているか、そして営業チームの仕組みが「売り手中心」になっていないかを今一度見直す必要があります。
なぜ営業の仕組みが機能しないのか? 3つの落とし穴
営業プロセスと顧客の実態の間にギャップがあると営業活動が形骸化し、意図した成果につながらなくなります。筆者はこれまで数多くの企業の営業支援をしてきましたが、多くの企業がとくに次のような落とし穴にはまっていると感じています。
落とし穴1.社内完結型の営業プロセス
社内で決めた営業プロセスが、顧客の意思決定プロセスと合っていないケースです。たとえば「まずヒアリングして、次に提案」と決めても、すでに情報収集を終えている顧客にとって「ヒアリング」は不要なステップとなり、商談の進行を妨げてしまいます。顧客の検討フェーズに合わせて柔軟にプロセスを変える視点が必要です。
落とし穴2.売る側の視点に偏りすぎる
営業の目的が「決められたプロセスを遂行すること」になり、顧客の本当の課題に向き合えていないケースです。「この機能がすごいんです!」と自社の強みを伝えても、顧客からすれば「だから何?」となってしまい、心を動かすことはできません。顧客が求めているのは、機能の説明ではなく「自社の課題をどう解決し、どんな成果をもたらすのか」です。機能ではなく、“価値の翻訳”を意識する視点が必要です。
落とし穴3.仕組みに縛られ、変化に対応できない
市場環境や顧客の購買行動が変わっても、「決められた営業プロセス」に固執し、柔軟に対応できないケースです。たとえば、2020年以降、リモート商談の普及が加速しています。しかし、従来の対面営業を前提としたプロセスに固執すると、オンライン対応が遅れ、顧客のニーズに適応できず、機会を逃してしまいます。環境変化に応じて“営業プロセス自体をアップデートしていく”視点が必要です。
このように、社内の効率化ばかりを優先すると、営業の現場と顧客の実態との間にギャップが生じます。その結果、顧客の意思決定プロセスと噛み合わず、商談がスムーズに進まなくなります。本当に成果を出すためには、顧客と共創できる関係を築くことが不可欠です。次項から、具体的な共創の進め方を紹介します。