組織づくりには「あえて非効率」が必要なときがある
──とはいえ戦略を決めても、それを現場のインサイドセールスや営業に徹底して実行してもらうハードルは高いはずです。どう浸透させたのでしょうか。
井塚 まず、「受注率XX%(当時の3倍の数値)は正義である」という目標の旗を立て、全メンバーに日々伝え続けました。そして実行フェーズでは「毎日の夕会」を導入しました。
──営業現場としてはかなりの負担になりませんか。
井塚 はい、非常に泥臭いですよね(笑)。ですが、1案件ずつ全員で議論することに徹底的にこだわりました。「なぜこのお客様への連絡を、週明け月曜の午前に行うのか?」「オープニングトークのこのひと言で、お客様のどんな不信を払拭するのか?」といったレベルまで細かくレビューしました。
ときにはメンバーとZoomをつないで、私が思考を口に出しながら提案書を作る様子を実演して見せることもあります。「洗練された営業」とは何かを、背中で見せる期間が必要だったんです。
柿森 組織づくりにおいて、「非効率」であることがむしろ重要なシーンがあると思うんです。実際、この「非効率な時間」を共有したことで、組織内に「共通言語」が生まれました。効率化を優先して分断されていた組織が、非効率な対話を通じて、しっかりひとつにつながったんです。
スマートキャンプ株式会社 BALESカンパニー
戦略企画ディビジョン ディビジョンマネージャー 兼
テクノロジー戦略グループ グループマネージャー 柿森賢太さん
柿森 また、このプロセスを通じて「サービスは自分たちの手で改善し続けられる」という空気をつくることも重視しました。現場の声を拾い、サービスの質を高め、それをまた営業の提案に還元する。そうすることで、メンバーのサービスへの愛情が強くなりました。
「自社のサービスが好きだからこそ、より深く知ろうと顧客への支援状況を自発的に調べる」という良い循環が生まれていく。この「サービスへの確信」が、次のステップである単価アップへの伏線になったんです。
「単価10%アップ」はサービスへの自信が生んだ必然
──まさに、今回の改革で驚くべきは、単価を上げながら受注率を3倍にした点です。安売りせずに勝てるのはなぜでしょうか。
井塚 理由はシンプルで、「カスタマーサクセスという支援のプロ集団を、営業の最強の武器として再定義したから」です。無形商材の価値は、結局「誰が、どう支援するか」に集約されます。
これまで営業だけで完結させていた商談に、現場を知り尽くしたカスタマーサクセスも同席するようにしました。今では、カスタマーサクセスが同席しない商談はほとんど0%です。彼らが「この課題なら、私たちはこう解決できます」と実体験に基づいて語ることで、提案の解像度が劇的に上がりました。

──しかし、単価10%アップの決断には勇気が必要だったのではないでしょうか。
井塚 不安もありましたが、磨き上げてきたサービスへの絶対的な自信がありました。戦略的に事例をつくり、現場のノウハウを前面に押し出したことで、「他社より高くても、スマートキャンプのほうが確実に成果が出る」とお客様に確信していただけるようになったんです。
結果として、新単価を上げた中でも受注率も受注件数も増えています。「価値を正しく定義し、正しく売る」。これが営業組織に、何物にも代えがたい「誇り」をもたらしたと感じています。
